ニッケイ新聞 2006年8月17日付け
【金融部門】
今年の上半期を「〇四年以降拡大を続けてきたブラジル経済が初めて経験する試練の時期」だったとしつつも、結果的には「困難を乗り越え、正常に戻った」と評価。
これから、外部環境の変化、つまり①原油価格の上昇によるインフレリスクの増加、②米国経済の減速感、③日本における金融政策の転換――を注視する必要がある。
世界的な資源価格の上昇に支えられ、海外変動への耐性が増加。金融市場の混乱に関わりなく、実体経済は成長を続け、第1四半期の経済成長率は一・四%。政府は成長率予想を三・八%と上方修正した。
下半期の展望としては、成長率はやや減速するものの、政府目標は達成可能。為替はレアル高傾向で推移。銀行業界、保険業界も引き続き、拡大傾向を継続することが予想される。
選挙に関しては、金融・経済政策が論点になっていないことから、何れの政党でも経済政策に変更はないと見込んだ。
【貿易部門】
貿易収支黒字額は百九十五億四千百レアル。〇一年以降初めて、上半期における貿易収支減を記録した。
輸出はレアル高の影響があり、増加の勢いが減少。金額ベースでは全ての製品カテゴリーで増加したものの、数量ベースではいずれも低い伸びに留まった。
輸出相手国で見ると、中国向けに大豆が、アルゼンチン向けに自動車関連や携帯電話などの工業製品が好調な輸出を維持している。
輸入では、消費財、資本財の伸びが顕著だが、原材料・中間財が比較的伸びが低い。相手国別では中国の増加が顕著で、集積回路などの電気電子部材が大きく増加した。
対日貿易では輸出入ともにブラジル全体の伸び率よりも低い率で留まった。
下半期の見通しとしては、レアル高の影響があるものの、コモディティー賞品(鉄鉱石、原油、粗糖など)の国際価格が良好に推移しているため、目立った輸出減にはつながらない。
雇用情勢の改善、最低賃金上昇、金利低下などを背景に国内消費市場が拡大し、輸入増加が見込まれるものの、依然として、高い水準の貿易黒字が維持される。
【化学品部会】
農薬業界=一月~五月の販売額は昨年比一八%減少。農家の経営状況悪化、ドル安での輸出作物価格低下などの要因による。
飼料添加物=販売増だが損益はマイナス。鳥インフルエンザの影響もある。
化粧品=低中価格化粧品が業界を牽引している。今後も好調を堅持する見通しだ。
筆記具、外用消炎鎮痛剤(サロンパス)=レアル高の影響で業績良好。
食品添加物=勝ち組と負け組みの二極化が伸展。ANVISAの長期スト、大統領選の影響がなければ消費者需要の拡大を予測している。
ロジン(松脂)=需要量減少、輸出減少で苦戦だが、大統領選挙に向け公共事業増加が期待できる。
着色剤=増収増益で昨年比二桁に伸展。上向き傾向を継続する。
接着剤・シール材=自動車・二輪車向けが好調で昨年比二〇%増。安い中国製の拡販が懸念材料だが、販売は上向き。
【食品部門】
国内市場での製品販売状況は多くの商品分野で前年並みの水準を維持。一方、輸出分野では長引くレアル高により、極めて厳しい状況が続いている。
下半期の展望として、前年比で大幅な増加を予想する会社は少なく、引き続き、厳しい状況が続くと予想している。大統領選挙の影響は不明。(つづく)