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現代ブラジルの都市と政治=京都外大=住田教授が研究報告

ニッケイ新聞 2006年8月17日付け

 ブラジルだけでなく、ポルトガルの政治経済や映画についてなど幅広い分野を対象に研究を重ねている京都外国語大学ブラジルポルトガル語学科、住田育法学科長が来伯、二〇〇四年~二〇〇五年度科学研究費補助金で進められてきた「現代ブラジルにおける都市問題と政治の役割」についての研究結果を報告した。
 同研究活動は、住田教授が代表者となり、根川幸男(ブラジリア大学助教授)、近田亮平(日本貿易振興機構アジア経済研究所)、カイゾー・イワカミ・ベルトラン(アジア経済研究所客員研究員)、近藤エジソン謙二(筑波大学教授)、エレウ・オリヴェイラ・カルヴァルカンティ(フルミネンセ連邦大学建築都市学部教授・学部長)、エドゥアルド・コル・デ・カルヴァーリョ(京都外国語大学助教授)、近藤四郎(元グァタパラ市議会議長)、山崎圭一(横浜国立大学教授)、田所清克(京都外国語大学教授)、萩原八郎(四国大学教授)、ソノエ・スガハラ(応用経済研究所)、奥田若菜(大阪大学大学院博士課程)、谷口恵理氏(筑波大学大学院博士課程)、リウカ・ヨハナ(サンパウロ大学コミュニケーション芸術学部学生)、ジョゼ・コエーリョ・ソブリーニョ(サンパウロ大学コミュニケーション芸術学部教授)、グスターヴォ・リンス・リベイロ(ブラジリア大学人類学教授)らの協力により進められてきた。そのうちの約十五人が、二年間、通算十回の研究会を重ね、研究発表を行ってきたもの。
 報告書は歴史編と現代編の二部からなる。歴史編では三人の研究者がブラジルの都市化、近代化の過程を考察。住田学科長自身も「ブラジルの都市形成と土地占有の歴史――旧都リオデジャネイロを中心として」をテーマに研究を発表している。
 現代編ではブラジリア、リオ、サンパウロなど国内諸都市における交通や住宅、貧困などの都市問題、都市自治の形について十一人の研究を掲載。
 そのひとつ、「マルチエスニック都市サンパウロにおける『日本文化』の表象―東洋街における新伝統行事を中心―」と題した根川氏の研究内容では、リベルダーデで開かれる四つの伝統行事「花祭り」、「七夕祭り」、「東洋祭り」、「餅つき大会」を取り上げ、これらの行事がどのように東洋街で作り上げられるのか、要因を兼ねて考察したものもある。「ほかの論文も含めて優れたものに出来あがった」と住田氏は評価している。
 住田氏はまた、〇五年六月に開催された「日本ラテンアメリカ学会第二十六回定期大会」でも山崎、萩原、谷口、奥田氏らでパネルを立ち上げ「ブラジルにおける都市問題―ムニシピオの形成と都市行政の展開」について報告した。さらに山崎氏は、「〇五年度日本地方自治会(十一月開催)の分科会「海外の自治体行財政」で「南米の財政分権化と参加型予算」を報告し、同研究計画の成果を発表した。
 ほぼ毎年来伯する住田氏は、一九七四年に一年間留学したフルミネンセ大学時代の知人も多い。リオデジャネイロの情勢を調査、研究するため、十三日サンパウロ市を発った。同地では九月二十九日まで滞在する予定。