ニッケイ新聞 2006年8月22日付け
日本が人口減少に突入した―の報道に驚いた読者が多いと思う。コチア青年を始め戦後移住者は「過剰人口の捌け口」としての移民であった。1950年代の日本はまだ右肩上りに増え続けていたし、人口対策が国の大切な政策であり「移民行政」は、ここから出発したのである。それが―さる3月末の統計で前年比3505人も減ったそうである▼今の人口は1億2千7百5万5千25人で初めての減少だと総務省は報告する。日本の人口も減りますよの予測は以前からあるし、びっくりするほどのことでもないのだが、事実として示されると何となく心が落ち着かない。戦後の経済復興に大きな功績がある池田勇人元首相は「人は資源」の語録を残し有名になったけれども、東京五輪を控えた列島は好況の波に乗り人手不足が目立ち、池田発言も宜なるかな―であったのだ▼それにしても人は増える。幕末の人口は3000万人とされるが、あれから140年程で約4倍に膨れ上がったのだからやはり凄い。尤も、この50年は増加率が低くなっているのは否定できない。1950年代の日本とブラジルの人口はほぼ1億人だったけれども、今のブラジルは1億8000万人と急増している。あるいは、この人口増が「デカセギ」になったのかも知れぬ▼この人口減少をどう見るか?は難しい。大いに歓迎の向きもあるようだが、このまま行けば労働力の問題や少子高齢化という困難が山のように聳え横たわっている。もう小中学校の生徒数も減ってきており、政府は抜本的な政策と対策を急ぐ必要があるのではないか。 (遯)