ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)が、カシャサ・セミナーを十六日、同会議所で開催した。国内に約百店舗を展開しているカシャサリア「アグア・ドーセ」の社長デウフィーノ・ゴウフェトさんを迎えて、カシャサの歴史、種類、楽しみ方などが紹介された。講演後には会場を移して試飲会が行なわれ、参加者はカシャサの味を楽しんだ。
今では、ブラジルを代表する酒として世界が知るところとなったカシャサ。毎年十三億リットルが作られ、そのうちの〇・四%のみが輸出されている。
始まりは十六世紀ごろ。カシャサの語源は、硬い豚肉をやわらかくするためにも使われたことから「種豚」を意味する「カシャッソ」だそうだ。
十七世紀には、サトウキビが酒用になるのを嫌い、ポルトガルが生産を禁止したこともあるが、十八世紀にはケントンなどに使われて広く普及した。
独立の英雄チラデンテスが死に際に、「私の喉を、地元のカシャサで潤してくれ」との言葉を残したのは有名な話。カルドーゾ元大統領は「カシャサはブラジル特有のものだ」と述べた。
カシャサは圧搾、発酵、蒸留、熟成という過程を経てつくられる蒸留酒。職人が手間をかけて行う小規模なものと、機械での量産タイプ、自家製など、その種類は数千にのぼる。「好みは人それぞれなので、悪質なものを避け、自分の好みを見つける」ことで楽しめる。
土壌、サトウキビの質、収穫期、製法など出来上がりに影響する要素は多々あるが、中でも、熟成に使う樽の木質がカシャサの味には、決定的。
たとえば、カルバーリョは多孔質なので希釈性の高いエーテルなどの発酵を促し、熟成の過程で「上質な部分だけが後に残る」。また、バルサムを使うと木の味がよく出て、色も黄緑がかったカシャサができるという。「数十種類の樽を使い比べ、色や香りを与える」。
サトウキビの用途はカシャサ、砂糖、アルコールとあるが、使用するサトウキビに違いがあるわけではない。百種類ほどあるサトウキビの中で、土壌に合ったものを使う。ただ、「糖度が高いものがいいけれど」。
また、カシャサ、アグアルデンテ、ピンガの違いは、それを定義つけた法律がある。法令四八五一によれば「カシャサはアルコール度数が三十八から四十八度で、独特の蒸留法によって作られたもの」。アグアルデンテは、カシャサ以外のサトウキビの蒸留酒が含まれると考えられる。ピンガはカシャサの俗称で、「滴る」という意味の動詞「ピンガール」に由来している。
「来店されるお客さんの九〇%以上がカシャサは初めての人です」とアグア・ドーセ・サンパウロ支社長のバンデル・カストロさん。「低階層の飲み物」というイメージだったため、その価値が認められてきたのはここ十年というから意外。
「まだ、全体的な(好みの)トレンドはありません。新規の方にはマイルドなものを勧めています」。
カシャサを知り楽しむ=会議所=肩の力抜いたセミナー
2006年8月23日付け