サントスの日系団体が中心となって進められている旧サントス日本語学校の返還運動が大詰めを迎えている。二十二日、ブラジリアの大統領官邸で、ルーラ大統領が、サントス日本人会の遠藤浩会長ら日系社会関係者同席のもと譲渡に関する大統領令に署名した。半世紀にわたる返還運動は、百周年を前にさらに一歩前進した。
サントス日本人会が所有していた旧サントス日本語学校は第二次世界大戦中の一九四三年に敵性国資産として接収。戦争終結後も返還されることはなく、軍の施設として利用されてきた。
返還運動は五〇年代に、当時のサントス日本人会長だった故・中井茂次郎氏を中心に始まった。その後、第七代会長の上新さん(84)に引き継がれ、続いてきたが、実現にはいたらなかった。
日本移民百周年を目前に控えた近年になって、日本人会のほか、二、三世を中心とした金星クラブ、沖縄県人会サントス支部、サン・ビセンチ日伯協会、アソシアソン・アトレチカ・アトランタなど地元日系団体なども加わって運動は再燃。今年三月には陸軍が返還を認める書類にサインするなど、運動は実現に向け大きく前進していた。
ルーラ大統領による署名は二十二日午後三時から、ブラジリアの大統領官邸で行われた。式にはサントス日本人会の遠藤浩会長ほか、文協など日系団体の代表者も同席した。
今回の署名を受け、今後は連邦政府国有財産局との話し合いに移る。金星クラブの中井定男会長によれば、一カ月ほどで結論が出る見通しだという。
二十五年間会長をつとめ長年運動に携わってきた上さんは、署名の知らせを受け、「良かった」と一言。運動が若い世代に引き継がれ、実現に向けさらに前進したことに「一生懸命やってきた甲斐があった」と話している。
返還に向けさらに前進=旧サントス日語校=大統領が譲渡令に署名
2006年8月19日付け