ホーム | 日系社会ニュース | 68歳女性研修員、大分へ=目的「鶏めし」づくり習得=さすが「一村一品」の郷土=申請したらすぐOK=青年のように佐藤さん「ブラジルPRもします」

68歳女性研修員、大分へ=目的「鶏めし」づくり習得=さすが「一村一品」の郷土=申請したらすぐOK=青年のように佐藤さん「ブラジルPRもします」

2006年8月26日付け

 「帰ってきたら、鳥めしの試食会をしなきゃ」――大分県の研修生として、佐藤輝子さん(68)が二十八日に日本へ旅立つ。大分の郷土料理、鶏めしの作り方を習得するためだ。
 鶏めしは、鶏肉とゴボウをしょうゆ、砂糖、酒、隠し味のニンニクで味付けして、ご飯に混ぜ合わせた素朴なもの。県連主催の日本祭りでは大分県のブースでだんご汁と並んで販売され、西林万寿夫在サンパウロ総領事館総領事やジェラルド・アウキミン大統領候補が食したとして、盛り上がった。
 郷土食のための研修は今回が初めて。話の発端は今年の四月にさかのぼる。大分県人会は愛知県人会や熊本県人会などとともに屋台祭りを開催したおりに鶏めしを出品していたが、県人同士が「日本の鶏めしはどんなものだろうか」と話し始めたこと。
 永松通一同県人会会長はさっそく県に、「鶏めしの調理法を研修したい」と要請書を提出。返事は「すぐにでも受け入れます」だった。
 「日本祭りもあるし、準備も必要だから、五月、六月には行けないということで、八月になりました」と佐藤さん。県の反応は驚くほど早かったという。二カ月間の滞在中に、吉野鶏めし保存会吉野食品有限会社で働きながら、調理方法を学ぶ。
 県が費用を負担しての研修。青年の交流事業、語学や職業研修、日本文化習得のための留学は他にも聞くが、「郷土食の調理法を学ぶため」というのは珍しい。関係者は「県内に郷土食研修を行うのに良い雰囲気があったから」と事情を話す。
 同県では、平松守彦前県知事(一九七九年~二〇〇三年、六選)が就任した当初から、「一村一品運動」を提唱。それが県下に浸透して、各地で特産品が生まれた経緯がある。
 「地域にある資源を活用して地域の資本で、地域住民の知恵と技と創意工夫、自助努力で。『ローカルにしてグローバル』なものづくりを。『ものづくりを通じて人づくり』を。『人づくりを通じて地域づくり』を推進する」(大分一村一品株式会社ホームページより)。
 〇四年には「大分県文化振興条例」を施行し、文化振興についての基本理念や県の責務を定めた。
 佐藤さんが研修を行う吉野鶏めし保存会も、そんな動きの中の一つだ。
 一九八八年、大分市が毎月八日と十八日の「おにぎりデー」に鶏めしを採用。地元吉野地区の婦人会が保存会をつくって市役所内での販売を始めた。「一度食べると忘れなくなる鶏めし」の評判は、またたく間に広がり、有限会社設立に至っている。〇四年度の売り上げは三億七千八百万円。
 永松会長は「食を通して良い交流を図ってもらえれば」と話し、佐藤さんは「(日本の)皆と一緒にやって日本式のやり方を覚えたい。友達を作って、日本のことやブラジルのことを話したい」と抱負を語った。
 佐藤さんの帰国は研修ののちに親類を訪問して、十一月半ば。県人一同は「おいしい鶏めし」を、首を長くして待つことであろう。