【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】リオデジャネイロ連邦大学経済研究所は二十七日、国内産業は二〇一〇年までに再度電力危機に遭遇するという調査結果を発表した。ブラジルは過去五年間、電力供給に努力したにもかかわらず、関係機関の六〇%が、環境省の許可遅延により発電所建設が頓挫し、新たな危機到来を懸念しているという。そのためエネルギーコストが高騰する。関係機関は、産業の需要に即した現実的かつ客観的な環境法を早急に整備するよう訴えた。電力連合は、環境保全を優先する対策が貯水池の設置を阻止するため、水力発電時代は事実上終焉したと表明した。
電力危機の暗雲が、またもブラジルを覆っている。前回の電力危機で苦い体験を味わい、数々の発電計画を立案したにもかかわらず、環境保全のために挫折していることが明らかになった。現実に逆行する環境対策により国の発展が妨げられ、発電所建設の頓挫を関係者が憂慮している。
電力庁の報告によれば、二〇〇二年までだけで建設許可を申請した発電所二三カ所(発電能力五一五七MW)が、環境省の認可が下りないため工事中止になっているという。このような状況下、電力は二〇一〇年以後、配給制にせざるを得ないとみられる。
サンタ・カタリーナ州のクバトン発電所のように建設資金を調達し、一九九六年に許可が下りたが申請が白紙撤回となり、投資期限の二〇〇〇年までに具体化しないため流産したものもある。環境保護局(IBAMA)は、海岸山脈の一部が貯水池によって水没するのを禁じたからだった。
水力発電所は企画から工事開始までに三年、工事開始から電力を供給できるまでに五年かかる。前回電力危機で関係者の反省により、電力に関する認識は改善された。しかし、電気が実際に供給されるまでに、各部署の構造建て直し問題が山積している。
幸い降雨は南部を除いて順調にあり、発電や送電への投資もあった。年間経済成長率三%での電力供給は、二〇〇九年までは確保できる見込み。サンパウロ州工業連盟(FIESP)は、エネルギー政策が「お天気任せ」という姿勢は、政策不在を意味するという。
政府の方針と関係官庁の間には大きなギャップがあり、どっちも熱意がないので机上論で終わる。端的例が環境省と電力庁の関係である。業務がマンネリで、二〇一〇年の電力危機などどこ吹く風だ。
政府が賭けるマデイラ川流域開発とシングー川流域のベロ・モンテ開発は、電力システムの見直しをしないと何もできない。貯水池を造らないと、乾燥期に発電所がストップする。マデイラ川は雨季から乾季で水量が六分の一になる。シングー川は一三分の一まで水量が減少する。
環境規制により貯水池の建設が困難になったので、水力発電所の建設許可は絶望視されている。そこで火力発電の選択肢に、電力連合の関心が深まった。貯水池の規制強化と天候不順による水量確保の困難、環境保全の圧力など。これは世界的な傾向らしい。
電力危機再来の恐れ=2010年までに=環境省の許可遅延で=水力発電時代は終焉
2006年8月29日付け