【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】社会経済開発銀行(BNDES)は二十八日、フォルクスワーゲン(VW)の設備投資に向けた緊急融資四億九七一〇万レアルの払い出しを、同社と従業員の交渉が決着するまで保留すると発表した。同社代表とロウセフ官房長官、マリーニョ労働相、フィオッカBNDES総裁が同日首都で会合。VWサンベルナルド工場の設備近代化が融資条件で工場閉鎖は別件とし、まず従業員との交渉決着を求めた。会社側は、従業員のリストラを含めた近代化と設備投資が同工場生き残りの条件という。従業員は、会社側の呼びかけに一切応じない意向だ。
BNDESのフィオッカ総裁によると、VWの融資申請は設備の近代化とラインの建て直し、新車発表のための資金援助であり、工場閉鎖の話はなかったという。同総裁にとって閉鎖は寝耳に水のニュースだったと苦言を呈した。または融資を取り付けるための方便なのか、工場閉鎖の本音を確かめると述べた。
金属労組とVWによる三六〇〇人に上るリストラ交渉は、これまで何ら進展がなかったと労相が報告した。政府は、VWに労組と合意に向け努力をするよう政治的圧力を掛けるらしい。労組も従業員をまとめ切れないでいる。
VWは二十一日、労組へ同工場の再建計画に合意か工場閉鎖かの最後通牒を渡した。この最後通牒の内容が、BNDESには全く事前通告がなく、意外であったという。VW再建計画はBNDESにも関心事であり、工場閉鎖の選択肢に衝撃を受けたらしい。
VWへの融資は四月に承認済みであった。ドイツ本社でその後、VW全社の経営改革計画が持ち上がった。BNDESがブラジルVWへ、同社の経営改革は従業員の合意を得た後の実施を条件付きとした。しかし、従業員の雇用保持は融資条件ではない。BNDESの関心は経済活動であり、工場の操業を問うが雇用にはタッチしない。
VWと労組の交渉は双方がボルテージを上げており、会社側は五月に提示した全社で六〇〇〇人のリストラ強行実施をチラつかせている。労組は大統領府へ赴き、政府抱き込み作戦を模索している。
VWは既に、十一月に退職奨励金を除いたリストラ従業員名簿の作成に入った。十一月二十一日を以って解雇とする通告書の印刷を始めた。同日は二〇〇一年に結んだ雇用契約が満期となる一八〇〇人が解雇される予定。
当初計画の〇八年までに三六〇〇人は白紙撤回となり、六一〇〇人に増やし、サンベルナルド工場全従業員の半数が解雇されるらしい。それでも工場閉鎖よりは、ましと思わねばならない。会社側は従業員にスト突入の気配があり、集団休暇を与えて自動車の在庫整理を行う考えだ。
サンベルナルド工場でリストラが行われなければ、ドイツ本社は経営改革計画から同工場を外す考えだ。それは、糸の切れた凧のようなもの。同工場の現状は時代から乗り遅れたポンコツ工場であり、生産性と能率性は低く、避けて通れない非情の現実が控えている。
開発銀、緊急融資を保留=VW再建=設備近代化が条件=労使交渉の決着見守る=工場閉鎖は「寝耳に水」
2006年8月30日付け