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活況づく北東部の経済=消費の伸び著しく=生活扶助金でバブル発生=他力本願の克服なるか

2006年8月30日付け

 【ヴェージャ誌一九六九号】四年にわたるルーラ政権のお陰で北東部地方は、経済成長率が全国平均をやや上回り、お祝い気分である。同地方の九つの州はこれまで、ブラジルの僻地と見なされた。しかし、業種によっては中国がブラジルに引っ越して来たような活況だ。これが一抹の夢でなければよいが、心配である。ブラジル地理統計院(IBGE)の発表によれば、二〇〇五年五月以降十二カ月間の消費は一七・七%の成長振りで、業界の注目を引いている。最も裕福とされる南東部地方でさえ、同期は七%だ。この成長率が永続するならば、北東部地方は魅力の地域へ格上げされそうだ。
 五一〇〇万の人口を抱える北東部地方は、新しい魅力ある消費市場なのかどうかが関心の的である。最近数年にペルナンブッコ州だけで、七十三の食品工場が進出し、内外市場へ製品を出荷している。同地域住民のほとんどはCDEクラスに属し、他地方とは格段の差があり、馬力と意欲だけが取り得である。
 エウマ・チップスやネストレー、ユニリバー、ブンゲなどの大企業が、北東部地方で生産を始めた。そのため消費効果は顕著だ。全国的にも消費は上向いているが、同地方が景気回復の牽引車になりそうだ。北東部地方では消費がほとんどなかった生鮮食品や化粧品の売上げが伸び、生活水準の向上を示唆している。
 しかし、北東部地方の産業は、他地方に較べたらヨチヨチ歩きに過ぎない。同地方には生活扶助金という大量の資金が政府から注ぎ込まれた。現在の活況は、生活扶助金によるバブル現象といえそうだ。これは北東部地方の人間が稼いだものではなく、全国から吸い上げた血税である。
 有権者の票買収と陰口を叩かれた生活扶助金には、最低賃金の増額というおまけもついた。セアラ州のペドラ・ブランカ市は、生活扶助金で同市の通貨流通量が倍増した。生活扶助金で最も活況を見せるのは、飲み屋と露店市だ。
 貧乏人はカネが入ったら、まずピンガを飲みに突っ走る。「こうして御酒が飲めるのも、ルーラ大統領のお陰です」。そのカネは瞬く間に街をかけ巡る。これが北東部地方僻地の光景である。花見酒を地で行く、笑えない笑い話だ。
 リオデジャネイロ州とバイア州の消費を比較すると、生活扶助金の付与後バイア州がリオ州を六〇%上回った。激増したのは、ミルクと肉の消費。同時に化粧品や香水も急増した。北東部地方の生活向上に異論はないが、国民の血税で香水を消費することが納得できない。
 富の再分配は、検討の余地がありそうだ。北東部地方の村起しのため恒常的に投資をして、教育やインフラ整備を行う必要がある。北東部地方の住民は、自分の足で歩くように指導することだ。いつまでもマナが、空から降ってくると思ってはいけない。
 労働者党(PT)政権が打ち上げた官民合資法(PPP)資金は、ほとんどが北東部地方の工事に集中している。ノルデステ横断鉄道の四〇億レアルを始め一一〇億レアルの計画があるが、ダラダラ資金をつぎ込むだけで工程表も完成予定もない。
 北東部地方の住民は、ほとんどが貧窮状態にあるため、全ての政権が社会政策の優先地域とした。住民はニコヨン労働者のように、何らかの仕事を宛がわれ、最低生活を保障された。社会政策は同地方の住民を飢餓から救ったが、極貧状態から抜け出させることはなかった。幾世代にもわたって、他力本願は変わらない。
 北東部地方は教育やインフラなどの投資が疎かにされたため、いつまでたっても産業は真空状態で地域発展の基礎が築けなかった。国策で建設された工業コンビナートが起用したのは、南部の熟練工ばかりで、無学未訓練労働者の地元住民は採用されなかった。
 ここ数年北東部地方へ進出し地元を潤した企業が、そのまま定着できるかは疑問だ。現在同地方に起きている現象は、ルーラ大統領が票買収のためにバラ撒いた飴玉に群がった蝿のようなもの。大統領選挙が終われば、どうなるか分からない。経済学者は北東部のバブルを「北東部の中国」とか砂上の楼閣と呼んでいる。