「この太鼓、ここで作られているの?素晴らしい出来ね」と絶賛したのは扇千景参議院議長。「ちょっと叩いてみようかしら」とイグアスー農業協同組合のサロン前に展示されている太鼓を叩いて関係者の拍手喝采を受けた。同議長一行は、ブラジル、アルゼンチンなどへの視察と親善旅行途次の二十七日、入植四十五周年を迎えたパラグァイのイグアスー移住地を訪問した。
飯野建郎大使の案内で移住地入りした一行は、福井一朗イグアスー日本人会会長(岩手県)、内山新一イグアスー農協組合長(福島県)、小田俊春パラグァイ日本人会連合会会長(広島県)、河野敏パラグァイ日系農協中央会会長(広島県)、斎藤寛志JICA(国際協力機構)パラグァイ事務所長、有賀秀夫JICAパラグァイ総合農事試験場場長、移住地の日系婦人部代表や鶴寿会(老人会)有志ら多数の歓迎を受けた。
三時間ほどの短い訪問の中で、献花をして先没者に黙礼を捧げ、診療所、サイロ、製粉工場、JICAパラグァイ農業総合試験場の視察を行い、農協サロンで日系代表者との昼食懇談会に臨んだ。冒頭の感想は、サロンの前に展示されている和太鼓の説明を受けた時のもの。
移住地には〇三年六月に発足した太鼓工房があり、丸太をくり抜いた本格的な和太鼓が作られている(本紙・同年十一月二十六日報道)。原料の木材は移住地管内で入手している。日本で太鼓用の上質材と言われているケヤキに劣らない材質だ。太鼓を作っているのは棟梁格の石井吉伸さん(72・山形県)、幸坂佳次さん(秋田県)、黒沢貢次さん(群馬県)、大野ミゲルさん(二世)の四名。最近は日本の伝統工芸に惚れ込んだ二世の大山嗣彦くん(19)が、丁稚奉公のような形で先輩たちの技能を習得しようと一所懸命に励んでいる。
移住地に魅せられ、〇二年に兄弟で移住してきた和太鼓奏者兄弟も太鼓作りに関わっている。東京芸術大学教授を父に持つ澤崎琢磨・雄幾兄弟だ。移住地の若者や壮年で構成されている太鼓グループの指導もしている。和太鼓制作者と奏者が揃っているのが他に類を見ないイグアスー移住地の特徴だ。
これらの職能者たちが作りあげた和太鼓は一級品そのものだ。扇参院議長が絶賛したのもうなずける。懇親会の席上で、小さな和太鼓、もちろん、イグアスー太鼓工房作、が来訪記念に、と移住地代表から参院議長に手渡された(写真)。
「このような貴重なものを私に?もったいないようだけど、ありがたくいただきます。大事にします」とやや躊躇しながらも受け取った。
この和太鼓が東京九段にある参議院議長公邸、できれば応接間、に指定席を得て、訪問客に南米移住地生まれの日本伝統工芸品の粋な顔を見せ続けて欲しいものだ。
もう一つ、移住地生まれの大きな和太鼓は、去る十五日に横浜のJICA海外移住資料館で始まったパラグァイ日本人移住七十周年記念の『パラグァイ展』会場で展示され、存在を誇示している(十月十五日まで開催)。
扇参院議長がイグアスー産和太鼓を絶賛=移住地を訪問、歓迎受ける=「ちょっと叩いてみようかしら」=農協サロン、拍手湧く
2006年8月31日付け