大統領選挙を一カ月後に控え、経済成長率の低迷に配慮した中央銀行は三十日、基本金利を思い切って〇・五ポイント引き下げ、年利一四・二五%とした。通貨政策委員会(Copom)は景気の冷え込みにより、金融市場で全般的に実質金利も基本金利(Selic)に合わせて低下傾向にあることを予想外とした。Copomは満場一致で〇・五ポイントの引き下げを了承。市場関係者が今回の下げ幅を〇・二五ポイントと予測したのに対し、中銀の引き下げ幅がそれを上回ったのは初めてである。しかし、ブラジルの実質金利が世界のトップクラスにあることは変わりがない。
ブラジル地理統計院(IBGE)が三十一日に発表する第2四半期の国内総生産(GDP)を中銀は懸念している。中銀はマクロ経済政策の評価とインフレ予測に関する報告書を作成したが、内容の表現修正で再度会議を召集した。二〇〇五年九月から引き下げが始まり、連続十回で五・五ポイントの下げとなった。
市場金利の引き下げ幅は、三十日の引き下げも加えると九・四%になり、世界で二番目のトルコが下げた五・一%の二倍近くになった。市場関係者は、今回の引き下げが構造的なインフレ沈静化を意味し、経済の総合的な措置ではないとしている。今後の基本金利引き下げ継続については、皆目分からないという。
今後の傾向は、大統領選一次投票後の十月十八日に開催されるCopomの議事録で明らかとなる。今回の〇・五ポイント引き下げは、米国のインフレ懸念が払拭されたことと、国内経済が低調なためと関係者はみている。この調子で行けば、年末は一三・七五%へ引き下げと予想される。
金融関係者の予想を上回る引き下げとはいえ、産業界は不満である。サンパウロ州工業連盟(FIESP)のスカッフ会長は、政府は保守的な経済政策に固執し、経済成長を反故にしたと批判した。インフレ三・七%は、政府にとって成功であって失政ではない。保守政策の代価は、経済成長率マイナス一%と四〇万人の雇用喪失という。
全国工業連盟(CNI)は、基本金利の〇・五ポイント引き下げを、気休めになるが景気回復にはならないとした。実質金利が年一〇%になるよう政府が努力しないなら、経済成長は望めない。為替率がインフレの歯止めとなった今、思い切って基本金利引き下げに踏み切るべきだとみている。
ルーラ大統領は二十九日、サンパウロ市でメイレーレス中銀総裁と会合を開き、基本金利の〇・二五ポイント引き下げは少ないと伝えた。アレンカール副大統領はリオデジャネイロ州工業連盟の会議で、中銀の基本金利は産業を蝕む病原菌、風来坊のように何にも貢献することなく彷徨していると酷評した。中銀が口癖にいうインフレ対策は経済発展で最悪の障害であり、誇大妄想症による想像の産物と位置付けした。
CUTやフォルサシンジカルなどの労組は、中銀の散漫的通貨政策が雇用創出と設備投資の妨げになっていると非難した。中銀は生産を抑制し、投機による不労所得を奨励したと批判した。現場の実状を考慮しない通貨政策委員会に労組も出席し、基本金利の決定に参加させるべきだという。
基本金利を大幅引き下げ=Copom=年利14・25%に=市場関係者の予測上回る=実質金利世界一変わらず
2006年9月1日付け