【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】政府発表のブラジルにおける貧困層は四七一〇万人で、全人口の二五%に相当するとされている。このうち一一一〇万人が貧困家族手当(ボウサ・ファミリア)の支給を受けており、ルーラ政権の人気につながる目玉政策となっている。しかし関係者は手当て受給者が手当て打ち切りを恐れて就労を拒否する風潮が広がっていることから、貧困撲滅の基本的解決には至らないと指摘している。貧富の格差縮小が論議されている中、その実態を統計の数字で追っかけてみた。
まず、貧富の格差を比較できる典型的な例を挙げる。リオデジャネイロ市の中流以上の層のガーヴェア区と、ロッシーニャ区は両者が背中合わせとなっており、ガーヴェア区には高級住宅が立ち並び、ロッシーニャ区はファベーラのバラック小屋がひしめき合っている。
ガーヴェア区の人間開発指数(HDI)は〇・八九、文盲率が二%、平均就学が一一・九年、大学入学率が五五%、人口当り平均所得が一七四三レアル、平均サラリーが二〇四二レアルとなっている。これに対しロシーニャ区はHDIが〇・六一(全国平均より低い)、文盲率が一八%で、以下前記の順で三・七年、二%、一五三レアル、二一四レアルとなり、対照的な貧困層となっている。
ブラジルでは人口の二五%が貧困層にランクされている。中南米諸国と比較すると、アルゼンチンが二%、ウルグアイが八%、チリが一八%、ペルーが四一%、パラグアイが五〇%、ニカラグアが八〇%で、下には下がいる。
国内の地域別分布では北東部が四九・二%で約半数を占め、以下順に南東部(二七・六%)、南部(一〇%)、北部(八・一%)、中西部(五・一%)となっている。HDIは〇・七九二で世界一七七カ国中、六三位にランクされている。
黒人の四五%、白人の二二%が貧困層で、これらの六〇%が学歴は最高で四年まで(富裕層は九〇%が十二年)。所得別では最低賃金一カ月以下が一一%、最賃の半分から一カ月までが二三・八%、二十カ月以上はわずか一・一%となっている。
栄養不良は人口の八%相当の一三一〇万人、外国ではエチオピアの四六%、コロンビアの一三%に次ぐ。ほかでは中国(四%)、チリ(四%)、アルゼンチン(三%)となっている。
住宅施設では六五〇万人がファベーラ住いで、このうちサンパウロ市は二〇七万人、リオ市は一三八万人となっている。ベレン市は人口の三五%がファベーラ住まいで国内ランク一位。
連邦政府が貧困対策として支援しているボウサ・ファミリアの対象は一一一〇万人で、今年七月の支給額は六億八三一〇万レアルだった。一人当り平均六一・四三レアルで、国内所得の〇・五%に相当する。このほか、ガス支援(一〇〇万人対象)、授業料(一四万二〇〇〇人)、食料支援(約五万人)を援助している。
貧富の格差の実態報告=4人に1人が貧困層=リオ市の一角が示す典型例=家族手当では解消しない
2006年9月1日付け