南米のサッカー大国ブラジル。その本場のサッカー事情と社会環境を学ぶことを目的に、先月二十四日から来伯していたJリーグ・アカデミーと各クラブの育成センタースタッフ、都道府県サッカー協会の指導者ら三十一人が一日、サンパウロ市カンポリンポ区のサンパウロ日本人学校を訪れ、小学部の児童約百人に、一時間の特別授業をおこなった。
コーチらは低、中、高学年の三つのグループに分かれて、児童たちと一緒にサッカーをして汗を流したほか、指導者の仕事などについて話をした。参加した児童たちは「あっという間に時間が過ぎた。とても楽しかった」と笑顔。コーチらも「子供たちがすくすく育っている。逆に力をもらった」と満足した様子だった。一行は、同日日本へ帰国した。
同海外研修は、日本のプロサッカーリーグであるJリーグが主催。各チームのサッカー普及部や指導部の担当者が主な参加者で、海外のクラブチームやスタジアムなどの視察をおこなうほか、研修先の日本人学校を訪問し、子供たちにスポーツの楽しさを伝えている。これまでスイスやスペインなどヨーロッパを中心に四回実地。今回初めて南米への派遣となった。
授業は低、中、高学年の三つのグループにわかれておこなわれた。低学年と中学年の児童はそれぞれ運動場へ集まり、コーチらと一緒にサッカーのミニゲームをして汗を流した。子どもたちは、元気な声を出しながら、一生懸命にボールを追いかけていた。高学年の児童たちは、体育館に集合し、「指導者の仕事について」や「有名サッカー選手の裏話」などに熱心に耳を傾けていた。
授業後は、コーチらのまわりにはサインを求める児童でいっぱいになった。一行からはJリーグの公式試合用のボールなどがプレゼントされ、子どもたちは大喜びだった。
アカデミーは二〇〇二年に発足。Jクラブすべてに設置される育成センターが活動の拠点で、各クラブの指導者たちが、地域の幼稚園や小学校の体育の授業などに出張し、遊びを通じて体を動かす楽しさや、集団でのルールの大切さを子ども達に教えている。普及者にはJリーグで活躍した元サッカー選手なども含まれる。
これまで各チームが全国の子供たちに教えてきた人数は延べ六十七万人。「地道な活動の積み重ね」とJリーグ技術・アカデミー部マネージャーの山下則之さんは話す。
当初はこれらの普及活動もJリーグの観客動員を増やす目的で行なわれていた。しかし、日々の活動を通して、指導者らは「日本の子供たちは変わってきている」と実感。個を育て、相手を思いやり、グループで協力する力を育成する必要があるとして、育成センターでの幼児受け入れや、各地域の保育園や幼稚園へのスポーツ巡回教室を通して指導をおこなってきた。
「子ども達の生きる力を育てたい」。そう話す山下さんの言葉は、この日、笑顔で子どもと接していた指導者全員の思いのようだ。
サッカーを特別授業で=日本人学校児童大喜び=Jリーグ・アカデミー〃南米初出張〃=教えた実績延べ67万人
2006年9月5日付け