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中国方式にも一長一短=伯の問題解決にはならない

2006年9月6日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙八月二十日】ある日病気のムカデが、うめきながら足に「俺はどうしたらよいか」と相談した。「魔法使いに頼んで鶏に化けろ。そうすれば病気の九八%は治る」と足が答えた。これはマリオ・シモンセン元財務相が一九八〇年、ブラジルの経済問題を論じた演説の受け売りである。
 現代流に言うなら、鶏とは中国のことだろうか。政府は中国方式を導入し、ブラジルの国家開発計画を考え、中央銀行に通貨政策だけでなく経済成長と為替政策の責任も負わせるなら、ブラジルが抱える問題の九八%は解決し、国民は将来を心配しなくてもよいということらしい。
 魔法使いがいたとして、ブラジルが中国に化けたらどうなるか。経済成長率は一〇%、輸出は七五〇〇億ドル、外貨準備は一兆ドル。だが、いいことばかりではない。悪いこともあるのを忘れてはいけない。
 経済成長達成の秘訣は、ブラジル方式ではなく中国方式である。僅少資本と皆無に近い天然資源、溢れる無教育の非熟練労働者でヤリクリ算段を行うのだ。激安の人件費で世界制覇に挑む中国方式は、ブラジルにはマネできない。
 労働組合やストなど考えるだけでも、ブタ箱入りである。年金や恩給は忘れた方がよい。社会保障院(INSS)など中国にはない。病気になったら体力で治す。病気になって治療を受けられるのは、一握りの特権階級だけ。慰めはセスタ・バジカ(生活必需品バスケット)と超格安の家賃である。
 ブラジル人は中国人労働者の生活水準に順応できるか。セスタ・バジカで配給される米は、ブラジルでは飼料用のくず米だ。中国人は給料の半分を貯蓄する。この貯蓄は公社の運転資金に使われ、その配当金が中国人の恩給になる。
 中国を独立大国と思うのは早計だ。中国は米国市場に依存し、生産で生じた利益を米国へ再投資している。米国も生活用品の生産を止め、安い中国製品に依存している。米国の赤字財政は中国の再投資で、辛うじて面目を保っている。
 中国と米国の馴れ合い関係は、ブラジルが口をはさむことではない。中国はいつ破裂するか分からない圧力鍋のようなもので、専制政治と警察国家で体制を維持している。共産党幹部にコネがない一般人は人間扱いをされない。
 ブラジルにとって中国方式導入は絵空事だ。ブラジルが中国に化けても、問題は解決しない。ブラジルに足が百本あっても鶏のように二本になっても、問題は九八%も二%も解決しない。