【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】世界各国の農業政策を決定する、いわゆる世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハラウンド)が七月以降こう着状態が続く中で、解決の糸口を見つけるべくブラジル政府の呼びかけでG20(開発途上国グループ)会合がリオデジャネイロ市で、九日と十日間の二日間にわたり開催される。会合にはWTOラミー事務局長および欧米の通商大臣、日本の中川農水産相がオブザーバーとして出席する。ブラジルをはじめ中国やインドなどのG20側は何らかの足がかりをつけたいとしているものの、最大の問題点となっているアメリカの農業補助金が十一月の米議会選挙以前には決着がつかないとの見解が大勢を占めており、早期解決には至らないとの雰囲気が漂っている。
ドーハラウンドのこう着状態は世界各国の懸念材料となっており、今月十八日と十九日にシンガポールで開催されるIMF(国際通貨基金)と世銀の年次総会のメインテーマになるとみられている。さらに二十日から二十二日までの間、オーストラリアで行われる通商大臣会合でも議題として取り上げられる。今回のG20会合はこれに先がけて開発途上国グループの結束を固め、早期解決に向けてアピールするのが狙いとなっている。
そもそも論争の的となっていたのはアメリカの国内農業生産者への補助金で、米国政府はWTOに対し年間二二五億ドルの補助金予算を通告した。これに対しブラジルが提訴し、欧州連合(EU)が追従した。この時点で交渉は平行線をたどった。
ワシントンでは六日、十人の上院グループがホワイトハウスに六〇億ドルの補助金追加を要求した。当初の予定では四〇億ドルだった。これがEUの神経を逆なでし、同連合は補助金全廃と農産物関税引き下げに応じるまで一切の交渉を絶ち切るとの強硬姿勢を打ち出した。
WTOが補助金は違法だとの結論を出したことで、ブリュッセルにあるEU本部は七日、G20側の主張を受け入れて綿作農家への補助金を削減する決定をした矢先だった。ヨーロッパでは諸国間で永い論争の末に二〇〇四年に補助金実施を決定、二〇〇五年は一〇億ドルが支払われた。しかし今回の決定で半減するとみられている。これに対してアメリカが補助金引き上げの動きを見せていることで反発し、冷戦はヨーロッパ対アメリカの様相を呈している。
アメリカの補助金はブッシュ大統領の裁可にかかっているが、今回の補助金追加要求は十一月の議会選挙を視野に入れた農業族議員のスタンドプレーとみられている。それまではブッシュ政権も無下に拒否できないとの読みが背景にある。これを踏まえて事務局長をはじめ、ヨーロッパ代表らは、補助金問題は十一月まで進展が見られないだろうとの悲観的見方をしている。
ブラジルおよび中国、インドからなるG20リーダー国は今回のリオ会合で、ドーハラウンドの早期交渉の決着を促す声明文を採択する意向を示している。リオ入りしたインドの通商大臣は、ドーハラウンドは瀕死の患者が集中治療室から死体安置所に送られる寸前の状態だとし、金持ち国がエゴで貧困国をいじめていると猛烈に批判している。
リオでG20会合を開催=WTO=貿易交渉前進に向け=農業補助金問題は打開困難=欧米冷戦の様相呈す
2006年9月9日付け