【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】二日間にわたりリオデジャネイロ市で開かれたG20会合が十日、閉幕した。G20はアフリカ、アジア、ラテンアメリカの開発途上国二十三カ国が加盟し、主に農畜産物コモディティの世界市場での確保を目的に結束している。今回の会議は七月から物別れの状態となっている新多角的貿易交渉(ドーハラウンド)の再開による早期解決を目指し、ブラジルの呼びかけで開催された。閉幕に当たり、世界貿易機関(WTO)のラミー事務局長は、来年三月をタイムリミットとしてドーハラウンドを再開するとの決議を採択し、各国に通告した。最大の争点となっているアメリカの農業補助金問題が、十一月に控えている議会選挙までに進展が見られないとの配慮から、三月の期限が設定された。
会議にはG20加盟国のほか、世界三大主要市場とされるアメリカ、欧州連合(EU)、日本の代表がオブザーバーとして出席した。なかでも農業補助金と関税引き下げで対立を深め、七月以来話し合いのテーブルについていないアメリカとEUとの歩み寄りが注目された。
ラミー事務局長は米国の政治的背景を考慮し、十一月の選挙後に検討される来年度農業予算の議会承認を見た上で、ドーハランドの再交渉に踏み切ることを決定したと述べている。これに対しアメリカ代表は、決定を尊重し、前向きに検討するとの態度を表明した。
アメリカの農家への補助金は昨年四八〇億ドルから二二五億ドルへと六〇%削減された。このうち二〇〇億ドルは給付されたが、残金二五億ドルが予備となっている。WTOはブラジルからの提訴を受けて、補助金給付は違法だとの見解を示した。
しかし米国の上院議員の農業族ロビイストらは選挙を視野に入れて、六〇億ドルの追加予算を要求している。これに対しラミー事務局長は、ドーハラウンドの成否はアメリカの出方一つにかかっているとした上で、現段階では自動車に例えるなら故障して修理工場に入ったまま、いつ車庫に戻るかめどが立たない状況だと語っている。
いっぽうでEU代表は「ひん死の状態」だとし、選挙前は万国共通で、候補者と有権者の利益が絡んで統一見解は取りにくいものだと指摘している。同代表は農畜産品の関税を三九%引き下げたが、G20メンバーが不満を表明していることから、これを五一・五%に引き下げる意向を表明している。
いっぽうでブラジル政府はG20会合に出席した通商代表と個別に二国間貿易の交渉を積極的に展開した。とくにEUが鶏肉の輸入関税引き上げを目論んでいることで、これを打破すべく説得に努めた。また米国とは途上国保護関税の枠の増加を狙って具体商談を展開した。
この特別関税でブラジルは三六億ドルの輸出実績を挙げたが、米上院ではブラジルとインドは大国に当てはまり、特別関税の対象から外すべきだとの声が上がっている。インドとはエタノール輸出商談が煮つまっている。インドでは原油高騰の折から燃料ガソリンにエタノール混合を法令化するため、不足分をブラジルから輸入することを検討している。これにともないエタノール製造技術も導入する意向を示している。
WTO交渉、3月再開へ=G20会合が閉幕=米国の11月選挙を配慮し=伯、出席国と商談進める
2006年9月12日付け