【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】ブラジルの経済成長は、世界経済およびラテンアメリカ諸国と比べ低率で推移する―。シンガポールで開かれる年次総会に先立ち、国際通貨基金(IMF)が今年と来年の世界経済展望の中で発表した。その中でラテンアメリカとくにブラジルの経済政策の不透明さと、国民の所得格差の是正が課題になるだろうと指摘している。いっぽうで英国のフィナンシャルタイムズ紙は、ブラジルの低成長が、通称BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)のGDP成長の足を引張り、外国投資家に不信を抱かせる原因となっているとした上で、再選濃厚のルーラ大統領に経済政策改善の意向が見られないのが不安材料だと、手厳しい批判を加えている。
IMFによると、ブラジルの今年と来年の経済成長はそれぞれ三・六%、四%となり、前回四月に発表した三・五%を少し上回ったものの、国際レベルをかなり下回るものになった。世界経済ではそれぞれ五・一%、四・九%で、ラテンアメリカおよびカリブ諸国の平均は四・八%、四・二%となった。
アメリカは今年三・四%、来年二・九%、EUはそれぞれ二・四%と二%、日本は二・七%と二・一%で、いずれも低度成長となると予想している。しかしアジア諸国は高度成長の色合いが強く、とくに中国は二年連続で一〇%、インドはそれぞれ八・三%、七・三%となっている。
報告書では、経済成長につきもののインフレ上昇が懸念され、アメリカの金利上昇にともない欧州連合(EU)や日本もそれに追従するだろうとして、事態は流動的だとしている。ラテンアメリカ諸国の課題は、貧困対策の遅れによる消費経済の停滞と、一次産品(石油を除く)の国際競争力低下に加え、政府の一貫した政策の不透明さだと指摘している。
アメリカのインフレは三年連続で上昇を続け、二〇〇六年は三・六%となり、〇七年には二・九%になるものの、二〇〇四年の水準には届かない。このインフレ懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)は、八月の会合では金利を据え置いたものの、次回は引き上げる可能性が多分にある。
こうなるとEUおよび日本も同様の措置を取るとみられている。これにより、特にラテンアメリカ諸国では為替切下げを余儀なくされ、インフレが上昇することから、経済成長にはね返りの影響が出てくる懸念がある。
いっぽうで英国のフィナンシャルタイムズ紙は十三日のオンライン報道で、ブラジルの今年の経済成長は三%どまりとなり、発展途上国内での最下位争いを演じると予想している。これによりBRICと諸国の経済信用度の足を引張り、外国からの投資も減少すると指摘している。
さらに国民は低成長と貧富の差に抵抗を感じていないが、近い将来不満が爆発するとみている。また続投濃厚のルーラ大統領も意に介せず、政策改善の手を打とうとしていないと批判している。
伯経済は低成長で推移=IMF=新興他国へ悪影響=不透明な経済政策の改善を=所得格差是正も課題
2006年9月15日付け