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ボリビア=精油施設接収を発表=ルーラ大統領激怒=抗議の電話で一時凍結に=選挙後交渉の密約反古

2006年9月16日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】ボリビア政府は十三日、五月に発表した天然ガス資源の国有化宣言に引続き、ブラジルのペトロブラス(石油公団)のボリビア精油所の資産を接収すると発表したことで政府内に衝撃が走り、十四日は終日対応で騒然となった。ボリビアのモラレス大統領がキューバの国際会議で不在のため、寝耳の水のルーラ大統領は怒り心頭に発し、ボリビアのレネラ副大統領に急きょ抗議の電話を入れた。同副大統領はモラレス大統領と連絡を取り、その承認のもとに決定を〝一時凍結〟するとして撤回を表明した。ペトロブラスは資産接収に対し国家的略奪行為だと反発、これを強行した場合はボリビアへの投資を打ち切るとともに、これまでの精製プラント建設などに要した一億ドル強の投資金の賠償を国際裁判所に提訴するとの声明文を発表した。
 ブラジルは又もボリビア政府に振り回された。五月に行った天然ガス資源の国有化宣言では、ボリビア国内のペトロブラスのガス精製プラントを軍隊により占処するという一方的な行為だった。
 ルーラ大統領は当時、何も軍隊を派遣しなくてもと反発しながらも、ボリビアとの有効関係を維持するために国有化を容認した。当然内外から批判を浴びたものの、メルコスル内の貧困国の援助するのは当然の義務としてはねつけた。
 接収の報はボリビア側からロンドー鉱山エネルギー相に伝えられ、ルーラ大統領にもたらされた。大統領報道官によると、国有化に続く寝耳に水の発表に大統領は激怒し、「ボリビア領土を侵攻しても構わぬ」と口走ったという。
 直後、大統領はレネラ副大統領に電話を入れ、一時撤回にこぎつけた。同日夜、大統領はフルラン産業開発相主催の企業家との夕食会で、貧困国を援助する立場に変わりはないが「甘えにも限度がある」とした上で、ボリビアに限らず援助国には〝権威〟を保持しなければ秩序がなくなるとの考えを強調した。また、このような国の決定を首長レベルではなく、閣僚間で伝えるのも問題だとボリビア政府を批判した。
 いっぽうで関係筋は、接収は国有化の延長で、予めモラレス大統領の腹づもりだったとみている。先ごろモラレス大統領の反対勢力が施政に抗議して二十四時間のゼネストを決行したこともあり、同大統領は国民に対し、経済効果のある適時打を放つ必要に迫られていた。国有化の具体策を六カ月以内に決めると公約したことも今回の決定につながったとみられている。
 しかし政府および与党は、今回の発表がボリビア政府のルーラ再選に向けての裏切り行為ととらえている。八月二十六日にブラジリアを訪問したレネラ副大統領との間で、ガス供給問題は選挙後に行うとの密約が結ばれていた。このため十月九日に両国要人会議が設定された経緯がある。
 選挙を十七日後に控えて、ルーラ候補の対立陣営にとっては格好の攻撃材料となった。アウキミン候補は「芯のない、腰砕け外交の結果」とこき下し、エロイーザ候補は「エネルギー政策の欠如」として攻撃を開始した。
 ペトロブラスは略奪行為だと猛反発している。ボリビアのペトロブラス精製プラント権利をすべて国営石油YPFBに委譲して、ペトロブラスは単なるサービス、修理を管理するというボリビア政府案を一蹴するとともに、投資も含めて全面撤退も辞さないとの強硬態度を示している。その上で、これまでにプラント接収や建築に要した費用一億五〇〇万ドル相当の賠償を国際裁判に提訴するとの構えをみせている。ペトロブラスのガブリエリ総裁は、今回の発表は賠償額の削減を狙った卑怯なやり口だと決めつけている。