【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】サンパウロ州連邦警察は十五日にサンパウロ市内で個人情報データ売買の疑いで逮捕した二人が、労働者党(PT)の指示だったと自供したことから本格的に追及を始めた。動機や背景が明らかになっていないものの、データが救急車スキャンダルの主犯のプラナン社が所持していたもので、セーラサンパウロ州知事候補やアウキミン大統領候補などブラジル民主社会党(PSDB)党員に限られていることから、選挙工作用にPTぐるみで不正行為があったとみて、疑惑解明に乗り出すことになった。ルーラ大統領はこのニュースに「悪事を働くものは仲間たる資格はない」とお定まりの強硬発言でPTの関与を否定した。PTも重なるスキャンダル露見に戸惑いを隠していない。野党側は一斉に反発。PSDBは選挙違反だとしてルーラ候補の失格を選挙高裁に提訴した。
連警は十五日、サンパウロ市内のホテルで個人情報データ売買の容疑で三人を現行犯逮捕した。売り手側の一人は救急車スキャンダルで仕掛人となったプラナン社の経営陣の一人で、同社社長の叔父だった。買い手側は弁護士と実業家の二人で、買取り金額の一四七万レアルは押収された。
取調べに対し三人はいずれも交渉の背後にPTが存在するとの証言を行った。プラナン社側は社長自らがPTに資料販売を申し出た。同社長は救急車スキャンダルで逮捕されるとともに資産を差し押さえられたため、金欲しさに犯行を思い立った。
しかしこの資料は救急車スキャンダル事件の証拠物件に指定されていたため、同社長は無断持ち出しの罪が加わって再逮捕された。同社長は捜査に協力することで罪が軽減される司法取引が成立し、釈放の身となっていた。
いっぽうで買い手側の二人は、PT幹部を名乗る男から依頼を受けたと証言している。男は電話で依頼してきたため、実際には会っていないという。現金は交渉前日に一〇〇万レアル、当日に四七万レアルが代理人によって届けられた。依頼主によると、売り手側は当初二〇〇〇万レアルを要求したが、段階的に下げられ、結局一四七万レアルに落ち着いたという。
交渉当事者の一人は弁護士で、依頼主は資料の内容をよく吟味するよう指示したとのこと。その後の調べで弁護士は、依頼主は〝フロウデ〟あるいは〝フレウデ〟と名乗り、サンパウロ市とリオデジャネイロ市で警備会社を経営していると語り、交渉金はPTサンパウロ州支部が支払うと約束したとのこと。
この証言をもとに連警が調査したところ、PT党幹部にフレウデ・ゴドイ氏という人物が実在していることから、重要参考人として事情聴取することになった。ゴドイ氏はサンパウロ市とリオ市の警備会社の共同経営者であることも、証言と一致している。
ゴドイ氏はルーラ大統領の選挙で長年警備を務め、現在は大統領官邸の護衛武官として連邦職員の要職にある。ルーラ大統領とは労組時代からの盟友で、PT党内でも発言力がある。
動機や背景が謎に包まれているこの事件で、ゴドイ氏が何らかの意図で関与していれば、ルーラ大統領が発言した「仲間としての資格」が再度問われることになり、今後の展開が注目されている。
野党候補のデータ買収?=PT=汚職企業が申し出=大統領の盟友を事情聴取へ=動機と背景は謎のまま
2006年9月19日付け