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◇コラム 樹海

 若い取材記者が、全伯短歌大会で感銘を受けた一つは、自身の祖父母の年齢層にあたる参加者たちが、「電子辞書」をかたわらに置いて作歌していた姿だった。それは、つまり「老いても勉強する姿」だった▼電子辞書のキーを操作するのはどうも……、やはりページをめくる本状の辞書のほうがいい、と言うお年寄りは圧倒的に多い。ただ若い記者が受けた印象のように、電子辞書をひくお年寄りにはいい意味での新しがり屋が感じられ、好もしい▼それにしても、戦前のこども移民の日本語力は高い。こども移民全体でなく、独学をした人たちの日本語、というのが正確な言い方だろうか。その人たちの日本語力は、日常の作歌で大いに発揮される▼戦後の若い新来移民は、日本語新聞製作に携わった際、内外から「近ごろの若い者は日本語を知らない」と言われた。言われ続けてきたといっても当たる。「ブラジルに来てまで言われたくない」と思っても、現実が示していたから、反論の余地がなかった。実際に、戦前の中等教育(たとえ中退でも)を受けてきた人たちの日本語力は、戦後、大学教育を漫然と受けて渡航した若者のそれに比較すれば、〃着実さ〃において、はるかに上である▼いま、日本で電子辞書をもっとも使用する層は、大学受験を控えた高校生たちだそうだ。七、八年前と比べ、値段もかなり落ちた。受験生たちが大学入学後も、その辞書を、ブラジルの歌詠みたちのように愛用すれば、日本語力もよりつこうというものだ。(神)

2006/09/22