政情不安、金融界を直撃=トリプル安続く=不安の火種に油を注ぐ=大統領、党の悪事認める
2006年9月23日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】与党労働者党(PT)の幹部らが絡んだヴェドイン資料スキャンダルは、政界の混乱にとどまらず、金融界にも波及し、影響が拡大している。政情不安を反映してカントリーリスクは七ポイント上昇、ドル相場は二カ月ぶりの高値となり、株価は下落した。いっぽうで選挙高裁長官が今回のスキャンダルを「アメリカのウォーターゲート事件より深刻」と位置づけたことで、前職が更迭され新しく就任したルーラ選挙参謀との間で激しい口論が展開される場面も見られた。救急車スキャンダルの主犯で、今回の仕掛人のヴェドイン容疑者を取調べている連警は、PT党内で十一人が関与した疑いがあるとして、このうち六人の身許を割り出した。関与した疑いで選挙陣営から追放されたPT党員は八人に上った。
政情不安がまともに金融界を直撃した。二十一日の市場はカントリーリスクが七・〇二ポイント上昇し、二四四ポイントとなった。今年に入り五月二十日以降の国際原油価格高騰によるアメリカの不況不安、および七月十七日以降のレバノン情勢不安に次ぐ上昇となった。これまでは外国情勢が原因だったが、国内政情不安が原因となったのは初めて。
ドル相場は一・四七%の高値をつけて二・二〇九レアルとなり、七月十四日以来、二カ月ぶりのドル高となった。サンパウロ証券取引所(BOVESPA)の株価は一・〇四%下落し、指数は三万四八三〇と今年六月に次ぐ安値となった。
金融筋は、ここ数日間アメリカ経済の先行不安、タイのクーデター、ハンガリーの改憲運動など不透明な国際情勢により、国内金融市場では不安の火種がくすぶっていたのが、今回のスキャンダルで一気に表面化したとみている。
また国外金融機関の南米担当アナリストらは、今回の事件でPTとブラジル民主社会党(PSDB)の溝はますます深まり、次期政権が政治改革案を出しても与野党間の折衝は困難を極め、短期的に政党間争いの収拾はできないだろうとみている。さらにルーラ大統領続投となると、今回の問題でインピーチメントの動きも広まるだろうと予測している。
ルーラ大統領は二十一日、TVグローボ局の番組(ボン・ジア・ブラジル)に出演し、一連のPTの動きを「モラルに反する」とした上で狂気の沙汰と決めつけ、あくまでもスキャンダル事件を他山の石とする立場を強調した。大統領は次期政策プランの説明にきたつもりだったが、矢継早のスキャンダル事件の質問にうんざりするとともに、怒りをあらわにした。
それでも個人データを買収して選挙工作に悪用しようとした事実を認め、「悪人の口車に乗り成功した例は世界広しといえど皆無」だと吐きすてた。さらにベルゾイーニ党総裁を選挙参謀から更迭したことについては、同総裁をクロと断定した訳ではないとした上で、選挙まで残り十日間で、選挙参謀がスキャンダルの釈明にのみ明け暮れていては本来の職務ができないとの理由で解任したと説明した。
選挙高裁のメーロ長官は今回のスキャンダルをアメリカのウォーターゲート事件よりも悪質だとの見解を述べて、ルーラ候補陣営の反発を買っている。ウォーターゲート事件は一九七二年の大統領選挙でニクソン大統領が圧勝したもののCIAの情報漏洩が発覚、大統領は七四年八月八日に辞任、世紀のスキャンダル事件と言われた。
いっぽうでブラジル弁護士会(OAB)のブサト会長は、今回のスキャンダル事件の捜査の成り行き如何では、ルーラ続投となればインピーチメントの告発を会内で検討することになるとの方向性を明らかにした。