自民党も変ったものである。その昔―総裁選挙ともなれば、派閥の争いが激烈を極め、最後の最後は資金力が物を云ったし「サントリ―」なる言葉も生まれマスコミを賑わせたものだ。ところが、先の総裁選は、そんな荒々しいまでの戦闘的な雰囲気はまったくなく、派閥を横断して支持を集めた安倍晋三官房長官をすんなりと総裁にし、歓呼の拍手のうちに幕引きとなった▼この流れにそって安倍新内閣が船出した。マスコミ論評によれば閣僚人事は「論功行賞」の批判が多い。確かにそんな一面もあるだろうけれども、18閣僚のうち初めて大臣になるのが11人というのは、やる気の現れと見ていいのではないか。しかも―経済財政相の大田弘子氏や沖縄担当の高市早苗氏起用は評価したい。もう、大臣は男性専門の時代は終ったの認識を強め、性別を超えた能力による登用を心がけたい▼安倍首相が重視する官邸の機動力強化に従って首相補佐官を5人に増やし小池百合子、山谷えい子、中山恭子3氏を起用したのもいい。こうした女性重視は小泉流の人事を踏襲したのだろうが、将来の政界図を描く図柄になっているのではないか。だがー。安倍内閣の前に立ちはだかる政治課題は難しい▼770兆円の長期債務残高。少子高齢化での社会保障も先送りは許されない。とりわけ憲法改正は難問であり、安倍内閣で道筋をつけないと「永遠の夢」に終る恐れがある。そのためには小泉内閣を凌ぐ長期政権であってほしい。もう1内閣1事業ではいけないし、少なくとも4年や5年の内閣でないと國際的にも通用しない。(遯)
2006/09/28