【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】運転免許取得者にとっては、実地試験はまさに地獄への通り道となっている。科目の一つでも失敗すると、即落第となり、二度三度と通うことになる。しかしそこは魚心あれば水心で、袖の下でパスできる仕組みになっている。この仕組みは歴史の古いもので、自動車運転教習所が仲介して袖の下を試験官に渡して便宜を計ってもらうもので、未だに横行している実態が明らかになった。しかしこの手法で免許証を手にした未熟ドライバーはマナー違反が目立ち、大きな交通事故の原因となっている。
袖の下の値段はマチマチだが、三五〇レアルから四五〇レアルが相場となっている。自動車運転教習所が仲介するもので、教習所のインストラクターとの、練習中の車内で話が成立する。話に応じるのはおよそ二つのタイプがあり、一つは親から車を買ってもらう約束をした若者で、一刻も早く免許証が欲しいのと、もう一つは実地試験で一度ならずとも落とされた経験がある人らだ。
ほとんどが生徒から「何とかならないか」と持ちかけられるもので、インストラクターから話を持ち出す例は少ない。支払いは一括現金払いで、中にはクレジットカードや小切手での三回払いに応じる所もある。
契約が成立すると、教習所は直ちに実地試験の手続きに入る。試験当日は、袖の下を受け取った試験官がすべてに便宜を計ってくれる。興奮して思うように運転できない受験生に試験官はペダルから足を外して、ハンドルだけを握っておくように指示するなどの徹底サービスをすることもある。試験官席についている補助ペダルで作動してくれるもので、時にはギア操作もしてくれる。もちろん試験科目(車を寄せる項目)はすべて省略、コースを一巡して終り、後日、免許証は出来上がっている。
二十二歳の男性は二〇〇四年に三〇〇レアルを払って試験にパスした。男性が教習所に相談を持ちかけたもので、インストラクターは車道に乗り上げる失敗をしてもパスすると保証したという。落第すると再試験に一二〇レアルを要することから、リスク回避もかねて三〇〇レアルを支払った。試験当日、厳しい試験官だと受験生がささやく中で、試験官はボン・ジアと上機嫌で車に入り込んだ。発進させると、駐車テストの場所に着いてもそのまま直進するよう命じ、コースを一周しただけで実地試験は完了した。数日後、免許証を手にした。
一度落第の経験のある二十八歳の女性も同様だった。彼女は早々にエンストを起こしてしまった、本来なら万事休すだ。しかし試験官はふるえる彼女に対し、ペダルから足を取りハンドル裁きをすることだけを命じた。すべては試験官が補助ペダルで操作した。一周して終わると、落第生のように落ち込んだ姿で車から降りるよう命じた。ほかの受験生への演技だ。免許証はできあがってきた。
同様に二十一歳の女性も晴れて(実際には何もせずに)パスしたが、同じ教習所から試験を受けた他の三人は袖の下を払わなかったために、右折の合図を忘れただけで落第となった。彼女は教習所の所長が彼女の受験伝票を別にして試験官詰所に入るのを見ていたので、安心していた。さらに彼女は免許証を取りに教習所にでかけた所、当の試験官も来ており、おめでとうと祝福された。袖の下の金を受け取りにきたのだなと直感したという。
運転免許取得は金次第=魚心あれば水心=試験官の態度ころっと変わる=300R$払い合格
2006年9月29日付け