【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】大統領選の決選に向けてルーラ大統領とアウキミン前知事は二日、対決姿勢を露にした。TV討論会を再々反故にしていた大統領は、積極参加を表明し、マスコミによる中傷作戦も断念した。ヴェドイン調書の取引が自殺行為となったことで、同件の結末は連邦警察へ一任とした。ルーラ大統領の再選気取りは、霧消した。一方、アウキミン候補(PSDB=民主社会党)は大統領が一次当選のチャンスを逃したと評し、決選への切り札は綱紀粛正だと宣言した。また一次選で敗退したブアルケ氏を称賛し、決選への連立根回しが成功したことを示唆した。
千載一遇のチャンスを逃したルーラ大統領は、謀略戦から愛されるルリニャ作戦へ一転した。決選に向けたPT(労働者党)の戦略は、州知事選を圧倒的得票で当選したバイア州のワグネル知事とセルジッペ州のデーダ知事のツキに乗ることになりそうだ。
一方、決選へ持ち込んだアウキミン候補は、PT陣営の五州支援に対し七州の支援を獲得した。シュシュー(隼人瓜)のニックネームを持つ同候補は大衆を沸かせる話術に拙いが、庶民への知名度試験をどうやら突破したらしい。
全国的にはリオやミナスを始めとする東北部と北部諸州がルーラ、サンパウロ州を始めとする中央西部と南部諸州がアウキミン優勢で、ブラジルは二分された。
記者会見に臨んだ大統領の談話から、今回選挙で次のことがいえそうだ。支持率調査の結果は重要であるが、その時点の状況を現した写真のような虚像に過ぎないもの。確定事実は、投票箱を開けて、初めて判明するものといえる。
大統領にとって札束の写真公開は晴天のへきれきで、何がなんだかサッパリ分からないという。また起きたことは愚にも付かぬことだが、選挙結果を大きく揺るがし恐ろしいと述懐した。意図的にこんな芝居を仕組んだのであれば、背景を知りたいという。
PTは、実像と虚像が混在しているといえそうだ。党内にはサンタクロースが、実在すると思っている党員がいる。政党がマフィアの助けを借りて違法手段により党運営を図り、ブラジルの常套手段とうそぶいてはばからない。
今回の選挙は、政治倫理が問われることになりそうだ。良心にやましいことがなければ、怖れるに足らず。二十九日の決選投票は、ウソが罷り通り議会が泥棒の巣になるか試されるブラジルの正念場となる。数多くのCPI(議会調査委員会)が設置され、成果がなかったのは何を意味するか。CPIは議事の混乱を招くだけか、民主政治の遊びごとなのか。
議員当選は、無罪判決を意味するのか。救急車CPIで尾を掴まれた五十人の灰色議員のうち六人は、堂々と当選し大手を振って国会入りを果たした。これは有権者が、政治家の犯罪に目を瞑ったのか。
セルジッペ州知事に当選したデーダ氏は、PTサンパウロ州支部がかつてPTの頭脳であり心臓であったという。いまは腸に成り下がり、しかも悪性の下痢をしていると評した。
決選へ両陣営が作戦開始=成るか倫理の禊が=国民レベルの政治はどこへ=大統領選は冷戦時代へ
2006年10月4日付け