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〃琉僑〃=日本との新しい関わり方=世界ウチナーンチュ大会が目指すもの《第3回》=琉大に研究センター設立=移民のデータベース構築

2006年10月4日付け

 【沖縄発】国立の琉球大学法文学部には、全国の大学でも珍しい「移民研究センター」がある。いろんな分野から移民への関心が向けられている証左だ。
 〇三年六月に沖縄で日本移民学会が行われたのを契機に、森田孟進学長が同年一二月にこのセンターは創立した。初代センター長は石川友紀教授。社会学、文学、地理、英文、スペイン語などの研究者ら十二人のスタッフがおり、学際的な取り組みによる沖縄移民研究の中心だ。
 現センター長、町田宗博教授は「沖縄移民をメインにすえつつも将来は幅を広げていきたい」と抱負を語る。大学図書館と協力して、移民資料データベースを開発する方針で、早ければ今年中には骨組みを固める。
 膨大なテキストに加え、パスポート原本や現地で撮りためた写真、動画、音声などのデータを順次入力して充実させていきたい、としている。
 今回の世界ウチナーンチュ大会の最終日にはフォーラム開催も予定。WUB発祥の地ハワイ、そのハワイ大学の沖縄学研究者が最近、ウチナーグチ(沖縄方言)の英語版辞典を完成させた。同大学の日本研究所スタッフに参加してもらい、「世界の『沖縄学』へ」をテーマにシンポジウムを行うことになっているという。
 移民研究センターのスタッフ、島袋伸三名誉教授は七八年から計五回も訪伯し、沖縄移民の研究を重ねてきている。特に七九年末から八〇年初めにかけての三カ月間は、全伯をまわって約五百二十人から対面アンケート調査をした猛者だ。
 島袋教授は懐かしげに、次から次へとコロニアの人物名を出しながら、最近の様子を尋ねる。まるで、サンパウロで沖縄県人会の役員と会話をしているような錯覚を覚えるほど、コロニア事情に詳しい。
 同センターは論文集『移民研究』を年一回発行しており、すでに二号を数えた。
 創刊号の特集テーマは「沖縄社会とディアスポラ」。ディアスポラとは元々は「ユダヤ人の離散(追放)」を意味する言葉だが、今日では故郷を離れて異文化社会の中でコミュニティを形成するとの意味で広く使われている。
 巻末の金城宏幸論文によれば、四〇年時点の沖縄は、県民の概ね一〇人に一人が海外に在留していた。当然全国で飛び抜けて一位だ。二位は熊本県で二〇人に一人、三位は広島県で二六人に一人だ。
 親戚や友人には必ず一人は移民がいる状況があった。他県ではまず見られない「移民県」の特徴だ。それを反映して、八〇年代から地元メディアは「世界のウチナーンチュ」を意欲的に取り上げた。
 同論文によれば、琉球新報社は八四年一月一日から「世界のウチナーンチュ」をスタート。好評を博したため、八五年末までに計四八四回の長期連載となった。その後、三巻に分けて本も出版もされた。
 沖縄テレビ(OTV)も八七年から自社制作番組『沖縄発われら地球人』を始め、九六年まで一三五回に渡って世界で活躍する県系人を紹介した。九七年からは『世界ウチナーンチュ紀行』と名前を変え、〇一年までにさらに六二回放送。同年の日本民間放送連盟賞のテレビ放送活動部門のグランプリに輝いた。
 この番組の内容もセンターのデータベースに盛り込まれる予定だ。
 そのような意識の盛り上がりを背景に、復帰二〇周年を目前にした九〇年、バブル経済のまっただ中に第一回大会は開催された。
 奇しくも、入管法改正によりデカセギ・ブームが始まった、日系人と日本との関係を考えるに当たって特別な年でもあった。
(つづく、深沢正雪記者)