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日系社会との新しい絆を=兵庫県=初の日系人セミナー=多面的に見識深める

2006年10月5日付け

 【神戸発=既報関連】のじぎく兵庫国体で南米県人会から六十人が母県に招待されたのを機に、二日午後、神戸ポートピアホテルで「ひょうご日系人セミナー2006」(共生の世紀へ~南米日系人と神戸)が開催された。約二百六十人が参加し、体験談から学術、音楽、落語まで多面に渡って南米に関する見識を深めた。
 武田正義兵庫県出納長が主催者あいさつした後、田岡功駐日パラグァイ全権大使が特別講演し、自身の移住体験に基づいた共生社会実現への提言を行った。
 「パ国の移民は、日本人としての誇りをもって子弟教育に力を注いでいた」と力説し、「日本は今、本来持っていた国家の品格を失っている」と苦言を呈した。「もう一度、南米への移住を再開して日本の若者を送り込み、外国から見た日本の良さに一日も早く気づいてほしい。そんな機会を作るべきでは」と提案した。
 会場から神戸移住センター(旧移民収容所)を見た感想を聞かれ、「私が研修を受けた四十九年前のまま。中に入ると、懐かしい。ぜひ国の宝として保存してほしい」と語った。
 〇八年に向けて、同移住センターを国営の海外日系人会館にする運動を進めている「国立海外日系人会館推進協議会」の西村正会長が活動趣旨を紹介。約百万人の日本人が移民として海を渡ったが、その四割が神戸移民収容所で日本最後の晩を過ごした。
 移住知識の普及、国際交流の拠点として生まれ変わらせるべく、官民一体となって取り組んでいる現状がビデオで説明された。
 次に神戸大学の西島章次副学長が基本公演。「南米諸国と日本~新しい絆を求めて~」をテーマに、二十一世紀における南米諸国との経済関係のあり方や、日系人社会との新しい関係について論じた。
 経済面において、ブラジルにおける日本の存在感が低下している点を指摘。日本進出企業に対し、日系人を重用するなど、もっと徹底した現地化戦略が必要と語った。
 日系人は日本をもっともよく理解する人々であり、南米社会で中核を担う貴重な人材リソース(資源)と位置づけ、アマゾンの森林農業、感染予防、観光資源活用など多様な国際協力分野の開発が考えられると提案した。海外日系人に加え、在日日系人とも国際交流を図る有効性を論じた。
 その後、神戸を代表する奏者三人によるジャズとボサノバのセッションが行われた。
 最後は落語家の桂子米朝による国際交流講話。「最近の日本の若者は魂が抜けている。経済は変わっても、文化という魂は変えちゃいけない。日本文化が消えないように伝えることがなにより大事。その役割は日系人の若者しかいない」などと語り、会場を沸かせた。

知事に感謝の声続々と
歓迎レセプション

 招待日程の最後として同ホテルで午後七時から、井戸敏三知事主催の歓迎レセプションが開催された。知事は挨拶で「国体開会式で、南米県人会が来ているとのアナウンスがあったとき、会場全体から拍手が沸いたのを見て、私自身、胸が熱くなる思いだった」と振り返った。
 「良き思い出を故郷兵庫で作ってかえってほしい」とし、「何回も訪ね来たりし古里が いま新たなる思い出作る」との句をプレゼントした。
 南米から招待された六十人を代表してブラジル兵庫県人会の尾西貞夫会長は「はるか異国在住の私たちのことまで心にかけて頂いているという温情に、感謝の気持ちで胸がつまりました」とお礼をのべた。続いて亜国の山田宗吾会長ら代表が謝辞をのべた。
 長田執(まもる)県議会議長の音頭で乾杯。松尾治県連会長、酒井清一援協会長、上原文協会長らも「国体開会式には本当に感動した」などと思い思いに感謝の気持ちを口にした。
 童謡を現代風アレンジできかせる音楽グループ「童謡サロン」が「村祭り」「赤とんぼ」などを演奏。特に「夕焼小焼」では懐かしさのあまり会場が大合唱の渦に。神戸出身の歌手、深川和美さんは「〇八年にはブラジルに行くつもりです」と宣言し、県人会員らを沸かせた。
 最後に県人会員らによる「兵庫音頭」の踊りが披露され、知事らも踊りの輪に加わり楽しく締めくくった。
 井戸知事はニッケイ新聞社の取材に対し、南米から県人会を招待した理由を「五十年ぶりの国体は、県民総参加の〃感謝国体〃。県人会のみなさんにもぜひ一緒に参加してほしかった」と語った。