【エスタード・デ・サンパウロ紙六日】ルーラ大統領は五日、八日のテレビ公開討論会までにヴェドイン調書問題に、何らかの決着を付けるよう選挙事務所へ指令を下した。大統領は、同件につき善処済みであることを国民に明示し、ベルゾイニPT(労働者党)党首の首級と関与者五人を差し出す意向のようだ。報道写真に掲載された一七五万レアルの現金捻出に関った党首の責任追求は六日、党執行部が検討する。ベルゾイニ党首は五日深夜、まだ引責辞任に抵抗し、党執行部会議の召集にも反対した。しかし、状況は党首に不利な展開を見せている。
PTにとってヴェドイン調書は、避けて通れない問題といえそうだ。党とマフィアの腐れ縁が公然となったことは、応接間に死体を放置しておくようなもの。大統領の生命を守って影武者が、もうひとり犠牲になるらしい。
決選投票まで余すところ、二四日のみとなった。PTがさらに四年間政権を維持するため、ベルゾイニ党首の引責を問う党粛清会議が開かれる。大統領は同調書問題で国民が納得行くように善処したことを、宣言する意向である。
PTは現党首を辞任させ、後任にマルコ・A・ガルシア副党首を昇格させる予定だ。しかし、往生際の悪い党首交代劇である。チョンボというほどの失策ではないが、大統領選を決選に持ち込まれたことがショックだったらしい。
一寸先が闇とは、まだ何が起こるか分からない。大統領は、党が初歩的なミスを犯したことを叱責した。連邦警察の話では、PTの頭脳といわれる倫理委のメンバーが、同件に関与しているという。皮肉だ。
同調書は、DVDにセーラ次期サンパウロ州知事と救急車マフィアの関係を記録保存していた。これはメルカダンテ知事候補(PT)の応援に利用する筈であったが、逆用された。事件は党首更迭と共に、連座したPTのシンクタンクも道連れにされそうだ。
PTの党首席とは、出口の前に据えたパラシュート隊の腰掛けのようだ。いつ空中へ放り出されるか分からない高リスクの職務。裏金疑惑の責任を取らされジェノイーノ前党首が追われ、ジルセウ前官房長官と勢力争いで敗れたジェンロ前党首も去った。これでPT党首は、五人目を迎えることになる。
大統領は、公開討論会の対話練習で多忙である。討論の指導は、ジョアン・サンターナ氏。過去の一挙一動をチクチク質問され、得意のイデオロギーとかみ合わせなければボロが出る。討論会ではアウキミン氏が、調書事件を一ひねりも二ひねりもして誘導訊問をするのは明白。
一方、アウキミン候補は、アントニオ・C・マガリャンエス上議(PFL=自由前線党)の招きでバイア州を訪れた。同時に自党PSDB(民主社会党)の狼狽のまなざしも受けた。同州は伝統的に、同上議とPSDBの折り合いが悪い。同上議はこれまで、ルーラ大統領を支援してきたが、今回上議選に落選したことで鞍を乗り換えるらしい。
党首辞任で調書決着か=5人目の選手交代=公開討論会で善処宣言の意向=政権維持に払う数多の犠牲
2006年10月7日付け