=最前線から
- ■連載(64)=加藤眞理=聖南西文化体育連盟=日本語教育を支えるもの
2006年10月19日(木)
ブラジル移民百周年を二年後に控え、色々な意味で百年の重みときしみを感じている日系社会。日本語教育も例外ではない。「継承から普及へ」という言葉に、現在の日本語教育環境が良く表されている。十年ほど前から生徒数が年々減少し、将来の展望すら描けない学校もあるし、生徒も日系人に代わり、非日系の生徒が増えつつある。百年前にブラジルへ来た日本人は、自分達が作った学校にブラジル人が通う事を想像したことがあるだろうか?
しかしながら、生徒達の生活の中で日本語を耳にする機会は、もはや授業以外には殆どないし、教える側の教師も日常会話が話せる程度で、日本語を学んだという経験がない場合もある。そういう環境下で日本語教育が行われているので、当然問題もあるが、それをカバーしているのが教師達の情熱である。
現在、サンパウロから百キロの地点にあるソロカバ市を拠点に、聖南西文化体育連盟加盟十一校の中で活動しているが、この地域では教師研究会の活動が活発である。
活動は週末に行われ、そのための会議も定期的に週末に開催される。研究会以外にも休日に多い地元イベントのため、教師は日々、時間をやりくりし、生徒の指導にあたっている。
研究会の最大のイベントが今月二十二日に開かれる「お話学習発表会」であり、現在、各校でその代表者選考会が行われている。
この選考会が終了するまでが一つの山であるが、気力・体力ともに傍で見ているよりかなり消耗する。今年も半数の学校の選考会に参加させて貰うが、どこの学校の発表会もとても楽しみである。
専任教師が不在中の拠点校でも、先日、選考会がおこなわれた。
曜日と時間により指導する二世教師二人と午前、午後それぞれ一人ずつの助手(ブラジル人と三世)、この変則即成編成の教師四人は、経験の浅さを補うようにそれぞれが工夫をこらし情熱をもって指導にあたった。
今回、生徒には暗唱させたが、初挑戦であったため生徒が戸惑いを見せた。それを四人の教師がグイグイ引っ張り、最初はたどたどしい読み方だった生徒達が、回を重ねる毎に目を見張るほど上手くなり本番では全員が最高の出来で発表できた。
日頃の生徒達からは想像できぬほどの立派な発表に、胸が熱くなった。教師の情熱とエネルギーが、生徒達にストレートに通じた結果だと思う。
こういう教師達がいる限り、今後の日本語教育にも期待できると思っている。しかし、教師の情熱だけに頼るのではなく、有能で熱意ある教師に長期にわたって指導してもらうためには、待遇面や仕事量等、日本語教師の置かれている環境を見直すことが、まず急務であると思っている。 ◎ ◎ 【職種】日本語教育
【出身地】千葉県市川市
【年齢】56歳
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