どんな基準で百周年記念事業を選び直すか。百二十四もあるプロジェクトから闇雲に厳選するのでなく、グランドデザイン(全体像)が必要だ▼この時期まで遅れたことを前提に、最低限なすべきことは《1》「立派な式典や祭典」に加え、《2》「歴史を残す事業」《3》「後継者に伝える事業」の三点ではないか▼この際、ブラジル社会一般への日本文化普及に関する大がかりなものは両国政府が主導する「日伯交流年」事業にお任せし、自費ででも可能な事業に絞る意気込みがあってもいい▼《2》のような、今しかできない移民史の貴重な証言を残すことは優先されるべきだ。中川トミさんが亡くなって、また一つ〃移民の象徴〃がいなくなったと痛感する。片っ端から証言を残すというよりは、百年間という全体像、全伯という規模を考慮して学術的にやる姿勢がほしい▼移民史料館が提案していた、記録専門家による全伯で証言を集めるキャラバン隊「百年探検隊」のような事業は悪くない。その成果を日ポ両語で写真展やビデオ上映会などの形にし、各地で順次公開する。その繰り返しで、祭典本番に向けて雰囲気を盛り上げていけば一石二鳥だ▼《3》若手育成は各種青年部を盛り上げるしかない。世界ウチナーンチュ大会で、後継者育成のための企画を世界中から募集し、優秀作に百万円を授与して実行に移させる試みをはじめている。同様の試みはここでも有効ではないか▼次の百年期に向けて、何を「残し」「伝える」か。まず全体像を描き、次に具現化するような事業を考える時期にあるのでは。(深)
2006/10/20