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冷静さ取り戻した討論会=大人の言葉で語る=保健と経済で雰囲気転換=大統領は得意の皮肉と冗談

2006年10月21日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】SBTテレビ局の公開討論会で対峙した大統領選のルーラ候補とアウキミン候補は十九日、前回のつば迫り合いとはうって変り、配役を取り替えたような立ち回りを演じた。アウキミン候補は尖鋭的な攻撃を止め汚職告発にも矛を納め、専ら保健と経済成長へ標的を転換。ルーラ候補は公社民営化批判で味をしめ、皮肉戦略で終始対処した。ブラジルの経済成長率が、ラテン・アメリカで下から二番目という体たらくをアウキミン候補が指摘。ルーラ候補は、経済成長への下準備がやっと整ったところであると弁解した。
 今回の公開討論会は、見応えのあるものとなった。アウキミン候補は、相手の古傷を抉るようなことを止めた。ルーラ候補は、公社民営化などといっているから有権者の支持を失うのだと皮肉った。
 大統領は選挙キャンペーンが、単一音で奏でる単調なリズムであると制した。前知事は単一音ではなく、一七五万の音階からなる複雑なリズムであると応報し、ヴェドイン調書を間接的に批判した。
 大統領は「PT(労働者党)政権で色々なことが起きるのは、PT政権が生きている証拠。歴史上の数々の政権は、死に体で何もしなかった。前政権ではCPI(議会調査委員会)へ告発すると机の下へ隠し、もみ消した。PT政権では全てのスキャンダルを白日にさらし、ガラス張りの裁きを受けさせ責任者は処罰させた」という。
 保健問題ではアウキミン候補の専門分野であり、国立病院の量産方式による機械的で事務的な応対に国民の不満がうっ積していることを告げた。しかし、保健に一六億レアルの予算を投じ、全国民に治療と薬品の無料配布を行った政権はいままでにないと、大統領は指摘を一蹴した。
 「ルーラ大統領は一度、SUS(医療統一システム)のUTI(集中治療室)に入院してみろ。廊下から待合室まで隙間のある場所には所狭しと患者がぶち込まれ、その異様な光景を見たことがあるか。この世の煉獄である」「前知事が病院の廊下に放置された病人の一人ならば、政府は餓死寸前の人間に一握りの飯を与えるべきか、廊下の病人を人間らしく扱うべきか、いずれを選ぶ」と。
 経済成長については、PSDB(民主社会党)がエコノミスト誌に基づき発展途上国二七か国中、ブラジルの経済成長率は何番目に位置するかをアウキミン候補が質問した。ルーラ候補は、ニューヨーク・タイムス紙が真実を語ったといい「ブラジルは共和国史上、成長の準備がかくも整ったことはなかった。経済成長率は満足すべきものではないが、見方は各々異なるから何を言おうと勝手である」と応答した。
 運動会でビリを走る選手は、有能ではない。成長率でブラジルの後には、極貧国のハイチしかいない。PT政権発足時、八〇〇万人いた失業者は現在、九〇〇万人に増えた。公社が資金調達と大規模化を達成し失業者を吸収するためには、民営化が必要という。