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エネルギー危機再来か=電力政策の欠陥露見=ガス不足と環境保護が原因=頼みの綱は原子力発電?

2006年10月25日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】国家電力庁(Aneel)は二十三日、現在の電力供給システムが需要に応じられないとして節電計画の必然性を明らかにした。同庁の予測によれば二〇〇七年、電力不足のリスクは南東伯地域で二五%と見られ、二〇〇八年には五〇%に達する見通しである。環境保護のために水力発電は年々、建設許可の可能性が先細りとなっている。そのため燃油による火力発電で近い将来、電力コストの上昇が明白となった。ロウセフ官房長官は二十三日、原子力発電の起用について本格討議を始めた。
 ブラジルの電力事情予測では、ガス不足により火力発電所が操業を中止するため供給量が減少する。需要に対する総発電量は、電力不足が騒がれた二〇〇一年の状態に戻る可能性がある。カオスを最小限に食い止めるため、警告がむしろ遅すぎたきらいがある。
 電力事情は深刻である。せめてもの慰めは貯水池の水量が、二〇〇〇年の状態より恵まれていることだ。Aneelはガス不足による最悪の事態を想定して、電力の供給能力見直しを始めた。電力コストの上昇による産業界への影響も、計算している。
 ガス不足により火力発電が滞った場合、水力発電に頼る。それを補うには貯水池の水量は現在より四〇%から五〇%増が必要だ。南東伯地域の貯水量は現在、貯水可能量の四五・一五%となっている。関係者によれば、電力不足よりもコスト高であるという。
 大統領選の決選を近日に控え、ルーラ大統領はモラレス・ボリビア大統領から押し付けられた時限爆弾を抱え込んだ。対ボリビア外交は暗礁に乗り上げ、ブラジルのエネルギー問題は波乱含みである。
 モラレス大統領は決選前夜の二十八日、ボリビアにおけるペトロブラスのガス採掘権と販売権を打ち切ると通告した。同国からのペトロブラス追放令である。双方の合意抜きで、一方的な処分だ。発電用ガスの供給トラブルは、ルーラ政権への痛打である。
 ボリビア・ガスの安定供給を前提条件に火力発電所一三基が建設されたが、操業できるのは八基に留まった。火力発電は五三〇〇メガワットの需要予定に対し、一〇〇〇メガワットの供給能力しかない。
 ルーラ大統領が再選されるためには、イデオロギーだけでは済まされない。もっと現実的なエネルギー政策が、必要である。泥縄式であるが、火力発電を原子力発電に切り替える計画が浮上した。アングラ3に続き六基を建設するらしい。次期政権の四年間に、一部完成にこぎ着けられるかが疑問とされる。
 原子力発電による電力コストは、建設費こそ高価になるが、発電コストがメガワット当たり一三八レアルで、燃油発電よりやや安価だ。原子力発電を巡っては、エネルギー政策審議会と科学技術省で意見が二分する。さらに原子力発電に反対するのが、環境省だ。技術的に未熟で安全対策が、不十分だという。豊富なウラン埋蔵量では、世界で五番目に位置するブラジルが、宝の山に座って電力不足で泣いている。