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ポ語が第二言語に=ISEC=在日子弟の教育問題=20人が意見交わす=共生の取り組みに期待

2006年10月28日付け

 ISEC(文化教育連帯協会=吉岡黎明会長)は二十二日、文協貴賓室で「日本在住の幼少年を対象とした日本語とポルトガル語の学習」に関するメーザ・レドンダ(円卓討論)を行った。午前中は日本語教育、午後は第二言語としてのポ語教育について計六人が考えや経験を述べ、約二十人の参加者からは次々に質問が行われ、熱のこもった議論となった。
 開会のあいさつで、吉岡会長は「子弟の教育問題なくして今の日伯関係は語れない。困難だとしても、なんとか解決策を見つけなくては」と呼びかけた。
 午前中の日本語教育では、USP文学部の菊池渡助教授が最初に講演。日本語に加え、ジェスチャー(動作)を教えることも重要と強調。
 加えて、日本で罪を犯してブラジルに逃亡するデカセギが多発していることに関しても、「日本では自分たち一人一人がブラジルを代表しているのだという意識を持つべき」とし、そのような注意を喚起する役割も日本語教師の重要な仕事の一部と語った。
 二〇〇五年暮れから三カ月間、大阪大学で子弟教育について調査した仲栄真・住田・洋子さん(アリアンサ教師)は「日本で生まれ育った子弟にとって日本語が母語で、ポ語は第二言語になる傾向がある」と分析し、「在日子弟のポ語能力を維持させようという意識が、ほとんどの場合見られない」と親の思慮不足も指摘する。
 「日本の公立小学校五、六年の授業についていける学力をもった日系子弟に、ブラジルの童話(ポ語)の本を見せたら全然読めなかったので、とても悲しくなりました」とふりかえる。「日本語をおぼえるほど、ポ語中心の家族の中では孤立する傾向がある」。
 ところが、「日本人の友だちができて家に遊びに行こうとすると、そこの親が嫌がるからいけないという話も聞いた。仲良くなっても一緒に遊ぶこともできない」と現状を報告する。
 次に〇二年から今年一月まで外国人子弟教育の先進地、群馬県太田市のブラジル人学校で二年間、公立小中校のバイリンガル教師を二年間務めた経験をもつ岸エリアーネ理恵さんが発表した。
 教育特区が認められた太田市では、〇五年から他国の教員資格を持つ外国人もバイリンガル教師として教壇に立てる。全国でも珍しい外国人子弟受け入れ体制について紹介し、「日本人教師たちも大変力を入れてがんばっている。共生関係は徐々に良くなってきている」と強調した。「太田のような取り組みがほかにも広がってほしい」との期待を語った。
 昼食をはさんで午後からは、第二言語としてのポ語教育を討論。日本での教育経験のあるマツダ・キシモト・テルコ・エウザさん、キタハラ・オリベイラ・デ・ルシアーナさん、スペイン語教師のマリア・エタ・ヴィエイラさんがそれぞれの意見を開陳した。
 ISECのメンバー、心理科医の中川郷子さんは十一月下旬に在京の外国語大学による多文化教育シンポジウムにも招待されており、そこで討論内容の一部を報告するという。