コチア青年連絡協議会(高橋一水会長)は二十九日、宮城県人会で「コチア青年移住五十周年記念講演会、記念誌出版並びに飯星ワルテル連邦議員当選祝賀会」を開催した。講演会、出版記念祝賀会、当選祝賀会、祝賀パーティーと四部構成で行われ、コチア青年百人を含む、約百七十人が出席。参加者らは、先の統一選で連邦下議に当選した飯星ワルテル氏に代表される子弟らの活躍を喜ぶとともに、これまでの五十年間の歴史に思いをはせて、ともに歩んできた旧友との時間を楽しんだ。
立派な本ではなくて、ごまかしのない本を――。「五十周年を記念し、式典と植樹、記念誌発刊をすることが三本柱だったんです」と高橋会長は振り返る。
少ない予算では、出版の専門家に記念誌編纂を依頼することはできない。それでも「何か残すものがほしい。なら、自分たちでやるしかないでしょう」。
編集委員はボランティアの有志ら十三人。玉腰範義編集委員長は「最初は自信がなかった」という。皆それぞれが、自分の仕事をかかえ、忙しい時間の合間を割いて編集のために集まった。
会長自らが率先してパソコンを持ち出し、少ない人員で役割を分担。各支部へ原稿の投稿を依頼した。高橋会長は「提携者はいないし、仲間の間をたどって作りました」。
玉腰さんは「皆ね、原稿には『今は幸せである』と、いいことを多く書いているけれども、その『幸せ』の奥にはこれまでの苦しみがあるということ。その苦しみを隠して(書かずに)今の幸せな部分を残しておきたいという、その思いが大事だ」と話す。
記念誌「コチア青年―移住五十周年」は、約四百五十ページ。記念式典、青年らの歴史、実態調査、過去帳、名簿など内容は濃い。
講演会では、山中イジドロ元農務大臣補佐官が「ブラジルの政治と環境問題」について、宇野妙子JICAシニアボランティアが「高齢者の健康と生き方」について話した。
続く祝賀会では高橋会長が開会のあいさつ。発刊の喜びに声をつまらせる場面も見られた。田畑篤史在サンパウロ総領事館副領事、福田康雄県連副会長が来賓祝辞を述べた。
飯星氏は「皆様の誇りと力をいただいて、日系人として、ブラジル人として立派な議員になりたい」と抱負。父親の故飯星研さんと同船だった高橋会長は、言葉を詰まらせながら、「移住者の成功は、二世、三世に引き継がれてのもの」と、子弟教育にも力を入れた研さんを称え、同氏の活躍を激励した。
五九年に力行会で来伯した鶴我博文さんは「この集まりには感銘したね。僕らもコチア青年と同じように志を持ってきたけど、青年らは本当にできたひとばかり。ジーンときましたよ」と話す。
「みんなが兄弟や親子みたいなものなのよね」と花嫁移民のノブコさん。この日の集まりのため、遠くはサンタカタリーナやブラジリアからも青年たちが訪れた。
高橋会長は「五十年たっても百人の青年が集まってくれる。本当に言葉がでないほどにうれしい限りです」と、終わりなく続く青年らの歓談を見て、笑顔を見せていた。
記念誌の印刷数は千二百部。七百部が連絡のとれる青年らに、二百部が日本に送られるという。一冊五十レアル。「青年は優先します」と玉腰さん。連絡はコチア青年連絡協議会(11・3031・1123)まで。
「ごまかしのない本」祝う=コチア青年50年誌=発刊パーティー盛大に
2006年11月1日付け