ブラジル日本文化協会工芸委員会(川上久子委員長)主催の「第十回日伯工芸美術展」が文協ビル(サンジョアキン街381番)の大サロンおよび貴賓室で始まった。約百人、二百五十点ほどの作品のなかで、今年の工芸大賞を獲得したのはナディア・サードさん。一日のイナウグラソンで表彰式が行われ、約二百人が訪れた。川上委員長は「非日系の参加者が増える一方、長年出展している人も年々レベルを上げてきた」と工芸展を評価している。
「自分のルーツを探してるのかもしれないわね」とナディアさん。十年間、惑星や宇宙空間をイメージした作品を作り続けてきた。〃隕石〃は「どの向きからも見てもらいたい」と鏡の上に展示。サーチライトで穴の中を照らすと、内側にも宇宙が表現されていた。
ナディアさんは昨年の工芸展を見て、今年初めて応募したという。川上委員長は「宇宙空間を表した現代的な作品で、選定委員会の全員一致だった」と話した。
四十年前から行われている工芸展。日系人のみで開催していたのを、十年前から非日系人にも公開し「日伯工芸美術展」と改名した。
「日本では、伝統工芸を現代的な工芸と二種類に分けられます。けれどもブラジルではその区別はありません」と川上委員長。「日本人は日本の伝統工芸を踏まえた上で考えるけれど、非日系人はそうでない」。非日系人の出展があることで、日系人にもいい刺激になるという。
展示された作品は、焼き物を中心に、織物、金属、木彫など様々な素材に及ぶ。「自由な発想の作品が多くなって、審査が難しくなってますよね」。
表彰式ではまた、四十年間文協内の工芸活動に係わってきたササダ・ミチコさんに、その活躍を称えた賞が贈られた。
ササダさんは受賞を喜びながらも、「三十年前は、もっと日本のものが多かった」と振り返る。後継者がなかったこともあり、漆の作品、仏像などの彫刻、竹細工などは今ではほとんど出展がないという。「伝統工芸と違うものを持ってくる」と非日系の参加を評価する一方で、伝統工芸作品のレベルの低下にも言及した。
受賞者は以下の通り(敬称略)。ブラジル芸術賞=モリト・エビーネ。モンナ・マッサ賞=ニイネ・モリヤ。アクリレックス賞=アントニオ・ノバエス、マルスカ、ステラ・D・C・ワシントン、カンジダ・M・レモス・チャベス。
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第十回日伯工芸美術展は十日まで開催。月~金曜は午後二時から六時。土、日曜は午前十時から午後六時まで。
ナディアさんに工芸大賞=日伯工芸展開幕、10日まで=文協
2006年11月4日付け