イラクは「豊かな過去を持つ国」を意味するアラビア語だそうだが、確かにこの国の歴史は古い。BC18世紀後半のハンビラム法典は余りにも有名だし前4000年紀に栄えた世界最古の都・エリドゥもある。もっと親しみやすいのには「千夜一夜物語」があり、シンドバットの冒険に心を躍らせた向きも多い。こんな彩りを誇る歴史の国であるサダム・フセイン元大統領に死刑の判決があった▼イラク高等法廷が下した厳しい審判には批判もある。公判の進め方や判事の交代などに政治的な圧力があったの非難やシ―ア派とスンニ派の抗争が激しくなるの見方もある。しかし、約25年に及ぶフセイン独裁体制の頃には真っ当に機能した司法制度はない。批判はあるけれども、裁判がきちんと行われ検察陣の論告も弁護士からの抗弁もあったし、今は死刑の判決を評価したい▼無論、先月は一般市民が1200人も殺害されているし、もはや内戦に近いのが現状である。宗派対立が最大の原因だが、こうした治安悪化を防止する対策を急ぐべきは論を待たない。フセイン元大統領はクルド族弾圧には化学兵器を使用したとされ、この他にもイラクには不安定な要素がいっぱいある。こんな難問をいかに解決するかが問われるのだが、これは一つずつ徐々にやるしかあるまい▼三権分立がちゃんと履行されている国が普通なのだけれども、そうでないところもある。フセイン専制国家が見本であり、今、「元大統領に死刑」と司法の独立が一歩前進したのを喜び、イラクが真の平和を享受できるような社会に国際的な取り組みも忘れまい。 (遯)
2006/11/09