コラム
キョロキョロしていると「ペルミッソ!」(ごめんよ)と叫んで、一輪車に商品を山ほど積んだ青年が後ろから迫る。
ここは迷宮だ。パ国アスンシオン市民の台所を支えるメルカード4(第四公設市場)で、そう実感した。
サンパウロ市セントロの三月二十五街で鍛えられていると自負していたが、青シートで天井を覆われて地下道のように周囲を見渡すことができず、同じような仮設屋台が延々と続くそこでは、いとも簡単に迷子になった。
名も知らぬ魚、薬草から密輸品とおぼしき電化製品まで、ありとあらゆる商品が並ぶ躍動感にあふれる闇市だが、サンパウロ市より治安が良いと感じた。
「お帰りなさい」。市場から歩いて五分ほどの内山田ホテルに戻ると、日本語で明るくフロントから言われた。その彼女は非日系だったが、まるで外国から戻ってきたようにホッとした。(深)
2006/11/10
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