【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】国連開発計画(UNDP)は九日、ブラジルの人間開発指数(IDH)が所得増加でやや向上したものの、国際比較では順位下降と発表した。指数では〇・七八八ポイントから〇・七九二ポイントへわずかに上伸したが、他国の開発指数がより上昇したため、ブラジルは順位を六八位からドミニカ共和国に次ぐ六九位に下げた。人間開発指数の国連基準は、一人当たりの所得と文盲率、児童就学率、暮し向きの四指数で割り出す。国連報告書だけで人間開発の客観的評価は無理だが、上下水道や住宅問題で課題を抱えているのは確かだと環境省が発表した。
人間開発に関する国連報告は、ブラジルにとって不本意な内容だ。生活扶助金制度で辛うじて糊口を凌いだものの国際比較では後退した。慰めは教育と保健が現状を維持していることで、ブラジルの発展は足踏み状態にある。
国連は、世界一七七カ国のIDHを調査した。国連の物差しで計ると、ブラジルの人間開発は中程度の八三カ国に仲間入りし、遠い坂道を登る思いをさせる。ルーラ大統領が再選直後に宣言した、ブラジルの先進国入り実現に期待したいものである。
ブラジルのIDH上昇率は過去四年間に〇・二二%であった。一方、同時期コロンビアは〇・四八%、チリは〇・四七%。半分以下の停滞振りであった。調査基準に児童の就学率を測り、成人の学究意欲が除外されるなど調査対象の変更も影響している。
ブラジルのIDHが発展途上国の中で二八番目というのもショックである。ブラジル地理統計院(IBGE)が最近、ブラジルの所得向上を発表したが、所得格差でワースト一〇カ国にランクされている。二〇〇五年の所得格差では、ブラジルがグアテマラに次ぐ南米ワースト二位にあった。
所得格差が偏重する一二二カ国のうち、総所得の四五・八%が一〇%の金持ちで独占される八カ国にブラジルが入っていないのは幸いだ。ブラジルの貧乏人が、世界の貧乏人より貧しいのも事実である。貧乏人は、総所得の〇・八%を分け合っているそうだ。
国連報告書は、どこへもっと注意を注げという警告であって、各国の人間開発を位置付けしたものではないと環境省はいう。人間開発の査定には、河川対策や環境対策など多数の複雑な基準がある。国連報告書だけを見ていると、貧困対策は振り回される。
上下水道の確保と利用法は、人間開発の重要要因である。ブラジル国民の二五%は下水道がなく、パラグアイにも劣る。人間開発の向上を図るなら、国内総生産(GDP)の一%を上下水整備に充当すべきだ。現状はGDPの〇・三五%に留まっている。
それから犯罪の温床となっているスラム街などの住宅問題がある。レシフェ市では、天国と地獄が背中合わせで存在する。デジタル・センターなる団地があって、そこで勤務する職員の医療センターがある。一枚のベニヤ板を境界にコッケ・スラム街がある。落とし紙に使った新聞紙は、風に吹かれてどこともなく飛んでゆく。
人間開発指数わずかに上昇=国際ランク69位=課題は上下水道と住宅整備=教育と保険は現状維持
2006年11月11日付け