【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】治癒の見込がなく医師に死を宣告された患者に対し、医師は本人あるいは親族の同意のもとに、自然死を選択できることになった。また脳死と診断され医療機器によって命を長らえている植物人間に対しても、家族の同意のもとに機器を停止することが可能となった。
連邦医療審議会(CFM)が九日、決定したもので新法令として公布される。自然死は世界各国でも論議が展開され賛否で二分されているが、ブラジルでは承認することで結論づけた。
自然死は二〇〇四年にサンパウロ州の医学界で検討され、それを承認するようCFMに上申されていた。CFMでは今年初めから、医学の権威はもとより、司法界や良識層に広く意見を求めて検討した結果、今回満場一致で決定した。
CFMによると、死を宣告された患者は一医師が少しでも寿命を長びかせるのを目的に集中治療室に入れられ面会謝絶にされた上で、果ては寂しく孤独な死を迎えることになるが、自然死が認められると、本人および親族の同意のもとに、一般病棟で治療ができて家族との面会も自由になり、最後のひとときを楽しむことが可能だと説明している。これにより医師の治療義務を怠るものではないと強調している。
逆にこれまで医師や関係者が確執していた死へのジレンマが取除かれるとみている。これまでの自然死の例としてヨハネ・パウロ法王(一九二〇―二〇〇五)とマリオ・コーバス元サンパウロ州知事(一九三〇―二〇〇〇)が挙げられる。両者とも死期を知りながら一般病棟で家族や知人とともに過ごした。
法令では医師はカルテに病名を明記した上で、本人や家族に通告することを義務づけている。これを怠った場合の罰則には触れず、医師としての良識を求め、重大ミスは追及されるとしている。
いっぽうで自然死は安楽死と区別することも義務づけている。安楽死は患者の苦痛や家族の苦悩を柔げるために死期を早めるもので、ブラジルでは殺人行為に当るとして禁止されている。
患者の自然死選択可能に=本人及び親族の同意条件=余命を家族らと楽しめる
2006年11月11日付け