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70ドルから年商100億円=〝移民の夢〟実現した玉田さん=ニューズウィーク、日経新聞でも紹介

2006年11月11日付け

 日本経済新聞六日付けに、一人のデカセギ企業家が「出稼ぎ労働者として来日後、起業に成功して〃移民の夢〃を実現した」として紹介された。わずか十年で年商百億円の会社を作った玉田正利さん(34、三世)だ。一般的には外国人労働者に対する反発は根強く、時には排外主義すら顔を出す日本社会において、前向きな解決策として提言するトーンだ。経済専門紙による記事だけに、デカセギに関して犯罪がらみの暗いニュースの多い中、久々の朗報といえそうだ。
 玉田さんは多くのデカセギ同様、一九九〇年、入管法が改正されたその年に日本へ働きに行った。ポケットには「なけなしの七十ドル」(同紙)だけだったという。
 『ニューズウィーク日本版』六月十四日号にも玉田さんは紹介された。「日本で花開く移民の夢」との見出しで写真付きの記事だ。
 こつこつ貯めた資金で創業したのは九六年。『ニューズウィーク』によれば食肉卸売からスタートした創業当時、一カ月の収益はわずか五万円だったという。友人と二人で週末だけを使って、ブラジル人にリングイッサを売り歩いたのが始まりだった。
 静岡県浜松市天王町に所在する有限会社アイ・ビー・フォックス(I.B.FOX)は、ブラジルから食品、衣料品、ビデオなどの娯楽商品を直輸入するほか、日本国内でソーセージ、パンなどの製造・販売も行う総合商社に成長した。
 「流通業では同市最大級。従業員八百人のうち日本人は百七十人に達する」(同紙)。若干三十四歳で、祖父母の国を舞台に夢を実現し、経済専門紙に紹介されるまでになった玉田さん。「冒険心は一獲千金を狙って九州から南米に渡った祖父譲り」とコメントして笑ったという。
 今年六月、ブラジル人が集住することで有名な愛知県の保見団地にあった日本人のスーパー名鉄パレが撤退し、そのあとにFOXタウンという同グループのスーパーが代わりに開店したことでも注目を浴びた。
 日本経済新聞は「日本で外国人労働力といえば不法就労、犯罪、過酷な労働実態のワーキングプア(働く貧困層)など『負の側面』が取り上げられることが多い」とマイナスイメージを認めつつも、「なお、積極的に評価できる側面がある。不足する労働力を埋めてくれるだけではない。意欲のある外国人の存在が地域経済などを活性化し、新たな成長のけん引約となることだ」と肯定的な評価をあげる。

日本に〃大相撲ナイゼーション〃を

 同紙はその上で、〃大相撲ナイゼーション〃を提言する。
 幕内の三分の一が外国人となり、モンゴル出身の横綱らの活躍に沸いている。秋場所では懸賞総本数が千二十一本と史上最多を記録。「外国文化と『国技の伝統・格式』との調和に苦労しながらも、新たな成長期を迎えたようにみえる」とし、外国人の活躍が日本を支えている様子を〃大相撲ナイゼーション〃と表現している。
 福沢諭吉の言葉を引用した上で、「『異文化』を取り込んで成長の糧とすることの大事さは時代が下っても変わらない」と結んだ。
 わずか三十四歳にして百億円企業を興した若き三世の姿は、日本社会においても一つの良例として注目を浴びている。