【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】ルーラ大統領は十二日、十九日後に迫ったベネズエラ大統領選でチャベス大統領再選の立役者を演出するため、カラカス空港へ降り立った。ベネズエラ滞在中はチャベス大統領に恩を売り、ブラジル国内では第二次政権の組閣で連立を組んだブラジル民主運動党(PMDB)と同党所属の州知事らとの間で意見を統一させるための熟成期間を与えるという読みがあるようだ。大統領外遊中はブラジル共産党のレベロ下院議長が臨時大統領に就任。ルーラ大統領は「共産党の大統領が根を生やす前に帰国する」とジョークを言った。
ブラジル共産党のアウド・レベロ下院議長は、アレンカール副大統領が療養中のため一日大統領に就任した。一日とはいえ共産党員が大統領に就任するのは、ブラジルの歴史では初めて。レベロ臨時大統領は大統領のジョークに対し、「大統領専用機が国境を越えたら、ブラジルは私の天下である」と返した。
チャベス大統領はルーラ大統領の再選に向けた選挙運動中に沈黙を守り、再選に支障を来たす一切の言動を避けるという紳士協定を守った。今回のチャベス再選の旗振りはその返礼といえる。チャベス大統領が十二月三日、大統領再選を果たせば、二〇一〇年まで労働者党(PT)政権維持のために協力を惜しまないという。
ルーラ・チャベス両大統領は十三日、ブラジルのゼネコン、オデブレヒトがブラジルの国際協力資金でオリノコ川に建設したオリノキア架橋の竣工式に参席する。そのすぐ後にオリノコ河川敷でペトロブラスが油床を試掘する現場の定礎式に出席する。
大統領のベネズエラ訪問は、チャベス大統領の政権継続へ向けたネオリベラル派の南米左翼リーダーの肩入れといえる。ベネズエラ側から見れば、火中の栗を拾いに来たようなもの。米調査会社の支持率調査では、チャベス五七%に対しライバルのロザレスが三五%である。
国連総会でチャベス大統領によるブッシュ米大統領の「悪魔呼ばわり」は、ベネズエラ国民の三六%が喝采した。米大統領に対し失礼であり恥じるとしたのが、二三%であった。ルーラ大統領は危険な賭けに出ているらしい。
一方、大統領から十七日のフロリアノ会議までに結論を出すよう追い込まれたPMDB所属の州知事らとテメル党首は、党の意見統一で狼狽している。テメル党首は高等裁長官の椅子を諦め、下院議長の席を所望の意向とみられる。
PMDBはカルドーゾ政権時代に二回も下院議長を務めた経験はあるが、格好がよいだけで政治活動のチャンスはなかった。高等裁長官は、党首が高齢であることに配慮したPTのジェスチャーで、物々交換の方式でしかなく政治への参加はないとPMDBはみている。
連立政権は単なる票集めの議会対策であって、役職を通じての政策運営ではない。どこにもPMDB色を出すところがなく、PMDB政治は国民に見えない。党内は寄らば大樹の陰組と、野に下ってPMDB旗揚げ組が煩悶している。
チャベス再選に旗振り=ルーラ大統領=紳士協定の返礼に=PMDB意見統一に猶予も=共産党から初の大統領
2006年11月14日付け