【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】労働者党(PT)政権のルイス・グシケン政策顧問(NAE)は十三日、任務を辞し政治活動から引退する意向を表明した。同氏はPT政権の発足初期、広報長官として政権の枠つくりに参画した重鎮であった。その後、裏金疑惑や郵便局疑惑などで議会調査委員会(CPI)から追及を受け、政権中枢からの後退を余儀なくされた。疑惑追及はさらに部外者の生活基盤にも及び、同氏の連帯引責に至った。大統領府で政治の動向を見守ってきた同氏は、臨時の後任をメルカダンテ上議の実弟オリヴァ大佐に引き継いだ。
ルーラ政権の三本柱とされたジルセウ前官房長官とパロッシ前財務相、グシケン前広報長官のトリオは、今回の引退を以って一時代を終わるらしい。同氏はルーラ大統領の再選が確定したことで、次のスタッフへバトンタッチすることを決断した。
グシケン前長官にとって裏金疑惑は策略であり事実無根だという。政治家が選挙費用の借金を決済するシステムが、ブラジルには昔からあった。それを連立与党の議員だけが政府案承認のために公金を不正に受け取ったというのは、理不尽であると訴えた。
同氏は最近、政府広報やカード・システムの契約履行に不審な点があると、会計検査院(TCU)の標的となっていた。他にも政府広報の談合や遺族年金への不当介入などで疑惑追及を受け、精神的にストレスを貯めていたようだ。
同氏はPT政権中枢ではタカ派の一人とされた。いま生き残っているのは、ドゥルシ政調会長のみとなった。グシケン氏は、ルーラ再選を担った選挙参謀五人男の一人である。ルーラ再選が確実となった十月三十日、同氏は政権からの引退を決意したようだ。
再選は歴史に記録されるべき出来事になると、同氏は大統領に告げた。しかし、過去二年間の政権運営では政治的に未熟であった経験を教訓として忘れないよう警告した。この経験は、政治改革と近代化でバネになると同氏はいう。
グシケン氏の去就は昨年七月、広報長官を辞し政策顧問に格下げして以来、大統領府注視の的であった。昨十三日までの長期間、同氏の煩悶は周囲の同情を引いた。同氏はルーラ再選で、引退の潮時と悟ったらしい。もっと早く引退を表明すれば、引責辞任のように思われるからだ。
グシケン氏は十三日、大統領に辞表を提出した。両人はお互い人生最後のご奉公であり、考え直すことはないと以心伝心で意識した。辞表提出は僅かな時間であったが、二人は官憲に追われた労働運動から一次政権の思い出に花を咲かせ、一瞬パノラマを見た。
裏金システムは、ブラジルの政治資金運用システムである。全ての党が行っており、格別重要なことではないと同氏はみている。それより政策実施のためには議会の与党議席がどんなに重要であるかを分かっていなかったのが、PTの政策的無知であったと同氏は述懐した。グシケン氏は性格的にジルセウ氏やパロッシ氏とは対称的で、柔を以って剛を制するタイプであったと大統領はいう。
グシケン氏、政界引退へ=一時代に幕引き=大統領再選見届け決断=裏金疑惑は策略
2006年11月15日付け