【ヴェージャ誌一九八一号】ルーラ政権の一期目は、期待する程の経済成果がなかった。しかし国民の大部分は、もう一回チャンスを上げようと同大統領を再選させた。大統領にとって一期目は、どうやらブラジル政治の見習期間であったらしい。第二期が本当の腕の見せ所というが、どうなのだろう。議会でも連立工作がまとまり、一期目に比べ申し分のない政治基盤を築いた。これだけの支援を得た以上、ルーラ政権は何かできるはずだ。ベネズエラのチャベス流政治を採らなくも、ブラジルの近代化は可能と思われる。
前回の選挙でルーラ大統領は、必勝を期するため「ブラジル国民に告ぐ」とする革命的内容の覚書を打ち出した。国民を苦しめた国際協定を反故にし、ブラジルを困苦のどん底に突き落とした経済を抜本的に改革。債務決済と財政黒字を実現し、インフレを沈静化するというものだった。
今回は、そんな大袈裟な芝居は無用のようだ。しかし、テレビやラジオを通じて行った第二期政権の七つの公約は、第一期の覚書に相当するものであった。七つはインフレ抑制、経済安定、市場開放、官民合資計画、システム簡素化、減税、政治倫理確立などであった。
政権の三本柱として、経済成長と貧富の格差是正、英才教育の実施を挙げた。知りたいのは、どうやって目標に達するかだ。最も重視しているのは、社会保障院の改革。毎年四〇〇億レアルの赤字を出し、経済のガンになっている。
もう一つの不安材料は、政府経費の削減。ルーラ大統領は公開討論会で経費拡大論を唱え、史上最大の三五二〇億レアルを出費させた。官房長官の経費削減要望に大統領は耳を貸さず、ジェンロ憲政相の口にはタガをはめた。
優勢なプレイを展開したチームの選手は交代したくないもの。しかし、主な選手がスタジアムを去ったので、大統領はプレイ・スタイルを継続させる考えだ。だがプレイ・スタイルを倫理面から見ると、観衆の不満は明白である。
不正は正すと口ではいうが、実子がロビー活動する親をどうして信用できるか。第二期政権では、マスコミの動向が懸念される。ルーラ再選でこれまでのスキャンダルが帳消しになったのか、これから問われることになりそうだ。
大統領は第二期で左翼政治の真骨頂を見せるというが、どんなことをするのか分からない。ハッキリしているのはインフレ抑制と均衡財政を守り、経済成長は鶏が空を飛ぶ程度になる。労働者党(PT)のケチで生意気な政治スタイルは、再選に協力した連立与党に大した謝礼をしない。
ブラジル在住の米政治学者フライシャー氏によれば、過去五十年間に南北アメリカで再選された大統領は二期目で馬脚を現したという。極端な例を実地で見せているブッシュ大統領が、ルーラ大統領に再選のノウハウを教えてくれと電話してきた。
ルーラ大統領は三回も落選の苦杯を味わい、選挙の必勝法を習得したらしい。今度は是非政治で成功し、ブラジルに繁栄をもたらして欲しいものだ。
本領発揮か?次期政権=強固な基盤築く=7つの公約実現目指して=「2期目で馬脚」説覆るか
2006年11月15日付け