ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | インコール救済に暫定令=開発銀が緊急融資へ=2億5千万R$の赤字抱える=既に職員の半分解雇

インコール救済に暫定令=開発銀が緊急融資へ=2億5千万R$の赤字抱える=既に職員の半分解雇

2006年11月17日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】財政危機に陥ったサンパウロ市の心臓研究所(インコール)支援のため政府は十五日、暫定令(時限立法)を制定する方針を決めた。金融機関から一億二〇〇〇万レアルの緊急融資を受けるための保証人を立てられないため、暫定措置により社会経済開発銀行(BNDES)からインコール後援財団へ借入金を起こすことになった。取りあえずこれで職員の給料遅配と資材納入業者の決済遅れ、銀行債務の延滞を清算する。暫定令の制定はルーラ大統領と関係閣僚、インコール理事らが集まった会議で提案され、マンテガ財務相が草案を起草することになった。
 暗礁に乗り上げた座礁船、インコールの処遇をめぐって政府は、暫定令によって後援団体のゼルビーニ財団を財政支援することにした。インコールは現在、二億五〇〇〇万レアルの財政赤字を抱え、死に体にある。
 大統領は、財務相が金融機関から財政支援を受けるための保証人をあっ旋できないなら、暫定令による緊急支援を了承した。インコール理事会は、長期にわたる職員の給料遅配と薬品在庫と資材の補給で、直ちに一億二〇〇〇万レアルを必要としている。
 暫定令は、金融機関のように保障手続きを要しない緊急措置である。財務相が草案中の暫定令はインコールばかりでなく、医療教育と研究機関のジャテネ財団や公立病院、大学研究所にも手続きを経ずに財政支援を行えるもの。
 カトリック大学は、ゼルビーニ財団と似たような財政状態にある。一億一七〇〇万レアルの債務のために同大学は財政危機に陥った。教育省予算の立て替えで危機突破を試みたが、一年間充電は全くなかった。同大学はその間、三〇%の有能な人材を失った。
 インコールは十日、財政難のため職員の半分を解雇した。専門医は三十四人に、職員は三〇〇〇人に減らした。診療経費は緊急の是非を問わず一五%をカット。インコールはルーラ大統領の大票田である低所得層が頼りとする所だが、第二期政権の発足前に異変が起き、成り行きが案じられる。
 大統領命令で関係閣僚は四十八時間以内にインコールの財政問題を解決せよとハッパをかけられたが、オロオロするうちに時間は過ぎた。インコールの財政再建は傷が深く、短時間で癒えるものではない。財務相はサンパウロ州立銀行ノッサ・カイシャの緊急融資をレンボ知事に要請。同知事は、同行に多額資金の立て替え能力はないと否定する回答を寄せた。
 インコール財政再建のため、治療中の患者の二五%を民間の保健プランへ移籍し、病状の度合いで一部を他病院へ委託治療に出す計画がある。統一医療システム(SUS)には政府が治療費の二〇%しか支給していない。残り八〇%は財団の負担。
 ゼルビーニ財団の財政危機は一九九〇年、サンパウロ市で第二病棟の建設から始まった。さらに財政危機をもたらしたのは二〇〇四年、ブラジリアのインコール建設であった。現在のインコール債権者は、BNDES(一億一五〇〇万レアル)と民間金融機関(七八〇〇万レアル)、資材納入業者(五一〇〇万レアル)である。