【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】中産階級と呼ばれる所得の中間クラスは、収入が増えないにもかかわらず、税金や公共サービスの出費が増加するというジレンマに陥り、将来に不安を抱いている。ピラミッド型の所得階層の中間に位置するこの階層は、国内所得の五〇%を占めるものの、税金の六〇%を負担し、資本主義の中核を担っている。しかし、今年に入り、税金および本来は公共機関が無料で提供すべき医療や教育などへの出費が、実働日数に換算して一一三日に及ぶことが明らかになった。約三分の一に相当する三一%を費やしていることになる。
七〇年代の中産階級のこうした出費は、年間実働の二十五日分相当の七%のみだった。それが今年には約三分の一の一一三日分にはね上がった。
ブラジル税法企画院の調査によると、中間階級はほかの層より余計に税金を払うにもかかわらず、公共サービスの見返りが最も少ないと指摘する。この階層は人口の二〇%に満たないにもかかわらず、税金の納付は六〇%を占めている。
例えば月収三〇〇〇レアル以下の層の税金納付は収入の三八・八三%で、一万レアル以上の層は四一・五三%となっている。しかるにこの中間の中産階級では四二・五八%の高率となっている。保健と教育の占める割合は前者がそれぞれ八・九%と一九・二%なのに対し、二四・〇九%となっている。
カンピーナス大学の研究グループが今年一月に行った調査によると、二〇〇二年から〇四年にかけて最低賃金の二倍までの所得層の正規雇用は八六・一%上昇したが、中産階級では一〇・六%の減少となった。これにより、ますます就職難に陥ると予想され、大学卒の若者が職を求めて年間一四万人から一六万人が海外へ流出するとみている。
これら若者こそが将来のブラジル経済の中心となるべきものだと指摘している。しかし、現在の政策では貧困層向けの人気取りとも言えるもので、中間層は度外視されていると強調している。その良い例が貧困家庭手当(ボルサ・ファミリア)の普及と最賃の大幅引き上げで、反面、社会保障院(INSS)の年金引き上げは抑えられたままになっている。
中産階級の多くを占める年金受給者は、カルドーゾ前大統領時代から数年にわたり据え置きが続き、今年に入ってからわずか二%の調整に甘んじた。これにより中間層の消費が減少している。ある家庭では家族との外食を避け、旅行も中止、レジャーの消費を抑えている。
統計上では一般的に階級を所得で区別している。AおよびBクラスは月収平均が二三七八レアル、Cクラスは一〇九九・八三レアル、DおよびEクラスは五五六レアルとなっている。しかし、これを消費ならびに家庭の生活水準に置き換える動きが出ている。消費水準では家具や電化製品、住宅や車の有無などが対象となる。
これを基にすると最貧困のクラスEは二年あるいは三年後に皆無の状態となる。〇二年の時点でこのクラスは一二・七%だったが、今年はこれが二・五%の一一八万一〇〇〇人となった。クラスDも三四・四%から二八・九%へと減少、これがクラスCに流入して、この層は二〇・五六%から三九・四%へと増加したとの分析が発表された。これら消費の伸びは長期月賦払いが原因だとされている。
踏んだり蹴ったりの中間層=収入は増えない=税金高く公共サービスお粗末=1年の3分の1はムダ働き
2006年11月24日付け