【ヴェージャ誌一九八二号】ブラジルは、二〇〇年間もコーヒーを栽培していながら、その素晴らしさを発見したのはつい最近のことだ。ブラジルにコーヒーの樹を最初に持ち込んだのは誰か。諸説あるが、フランス領ギアナから一七二七年に、フランシスコ・パリェッタ軍曹がパラー州へ苗木を持って来たという説が有力である。
原産地はエチオピアとされる。ブラジルの気候風土が偶然コーヒー栽培に適していて、十八世紀には世界に聞こえる大生産地になっていた。以来コーヒーといえばブラジルが通り相場であった。ところがブラジルは、コーヒー豆を原料輸出するだけで加工することを知らなかった。
ブラジルのコーヒー豆生産量は四一〇〇万トンであるが、良質のコーヒーはその五%に過ぎない。良質のコーヒー生産国は、コーヒーの樹を一本も栽培していないドイツとイタリアだ。ベトナムやコロンビアから原料を輸入し、良質コーヒーのレッテルを貼り莫大な利益を得ている。
ブラジルのコーヒー店も、ようやく目が覚めた。ブラジルは米国に次ぐコーヒー消費国である。美味しいコーヒーが分からないはずがない。美味しいコーヒーにこだわる人は二〇〇三年には九%であった。それが今は二九%に増えた。
ブラジルでは街角のバールで飲むのが、コーヒーと思っていた。ニュージーランド人のカークミスター氏は、くつろいで優雅な雰囲気でコーヒーを味わえる店がないと不満を抱き、自宅の応接間に理想のコーヒー店を開業した。
米系のスターバック出店の影響もあって、コーヒーとは同じような趣向の人が集まる場所で、快適さが伝わるような環境で味わうのがコーヒーとして定着している。世界のコーヒー店の老舗が次々とブラジルの大都市に出店している。
コーヒー通はうぬぼれではなく、コーヒー園の土壌づくりから始め苗木を生み出し、コーヒーの樹を育てている。コーヒーをたてると、芳香が数分漂う。飲んだあとの余韻がしばらく残る。それはこだわりのワインに似ている。
コーヒーの魅力再発見=味にこだわる人増える
2006年11月29日付け