2006年11月29日付け
再来年(二〇〇八年)が日本移民ブラジル渡航百周年である。百年という歳月の長さを、最近、(わたしたちの)仕事を通じて、改めて実感させられている▼最古の初期移民としてシンボル的存在だった、笠戸丸に乗ってきた中川トミさん(享年百、熊本県人)が、さきごろ死去した。わたしたちは、トミさんの〃後継〃ともいうべき、「現在、最も長年月ブラジルで生活している日本人」(現存最古初期移民)を捜そうと試みている▼第一回笠戸丸移民亡き後は、第二回から第六回移民あたりが該当する、とした。旅順丸(一九一〇年六月サントス着港)、厳島丸(一二年四月)、神奈川丸(同)、雲海丸(一三年五月)、若狭丸(同)で渡航した人々である。〇歳でサントスに着いていたとしても、現在九十三歳以上という高齢だ▼二十二日付の紙面で「知っている人はいませんか」と呼びかけたが、いまだ、「ここに健在です」という確固とした返答は得られていない。さきに挙げた五隻の船の移民たちは、みんな死に絶えたのだろうか。「百年は長い」と思う所以である▼もう一つもどかしいのは、読者の記事の読解である。読み違えたのか、他界しているのにもかかわらず「わたしの知っている人が若狭丸……」と連絡してくる人がけっこう多い。知らせていただくのはありがたい。だが、シンボル的存在とするには、生存者でなければならない。改めて、ぜひ一報(編集部11・3208・3977、いけだ宛て)していただきたい。(神)