【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】軍警の機動部隊(ROTA)内で、複数の隊員が逮捕歴のある前科者を闇に乗じて殺害していることが、軍警規律委員会の調べで明らかになった。隊員が仲間や親族が殺害された報復や私怨を晴らすために〃抹殺作戦〃を展開しているとみて調査している。
そもそもこれが表面化したのは五月のPCC(州都第一コマンド)襲撃事件の折で、サンパウロ州内で警察署をはじめとする九九八カ所がPCCにより襲撃され、五十九人が犠牲となった。このうち軍警隊員は二十五人だった。これに対しPCCメンバー六六五人が逮捕され、一〇四人が射殺された。
射殺は全てROTA部隊により実行された。検死でPCCメンバーで襲撃に加わらなかった者や、PCCと無関係な者が多数出たことで、ROTA部隊の便乗殺害が取りざたされたが、物証がなくウヤムヤに終わった。
しかし、ここに来て同部隊の一隊員の密告で、抹殺作戦は現在でも続いていることが明らかになった。手口は前科者を車の盗難犯人に仕立て上げ、追跡の末に銃撃戦となり射殺したとするもの。車の盗難は顔見知りの商店主に偽の被害届を出させる。
この手口の事件では目撃者も現われた。PCC襲撃事件の始まる前日の五月十三日に車泥棒に仕立てられて射殺された男性の共同経営者だ。二人はサンパウロ市レプブリカ広場で竹細工の露天商を営んでいたが、射殺された男性が身分証明書不所持で同所で拘束された。無線で男性が強盗で逮捕歴があることを確認するとパトカーで連れ去った。
男性はグァルーリョス市で射殺死体となっていた。警察へのROTA部隊の報告書によると、この男性ともう一人(これも前科者)は同市内で車を強奪したことから、部隊が追いつめたところで二人が発砲してきたため射殺したとしている。
密告者によると、車は偽の盗難届が出され、ROTA隊員が予め現場に放置しておいて拘束した二人を車の傍らに連れていって、抵抗したように見せかけて射殺したという。射殺された二人からは硝煙反応もでず、車には弾痕もなかった。軍警規律委員会では隊員を割り出して取調べを始めたが、物的証拠がなく全員が釈放となった。車の持ち主も偽の盗難と一味への加担を強く否定している。
軍警機動部隊が前科者抹殺=親族殺害などの恨み晴らす
2006年12月1日付け