ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 刑務所新設計画を変更=地方からサンパウロ市近郊へ=高コスト、所在地の治安悪化

刑務所新設計画を変更=地方からサンパウロ市近郊へ=高コスト、所在地の治安悪化

2006年12月5日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】サンパウロ州刑務所管理局(SAP)は、刑務所を地方都市に新設し、サンパウロ市内の服役囚を移送するという計画を方針転換して、建設地をサンパウロ市近郊にとどめる意向を示している。計画変更の最大の理由はコスト高によるサンパウロ州政府の支出の増加が挙げられるが、このほか刑務所を受け入れた地方都市の負担の増加、犯罪組織とくに州都第一コマンド(PCC)の勢力助長、更生施設の不足などとなっている。
 刑務所の移転計画は二〇〇一年、サンパウロ市のカランジル刑務所の閉鎖を機に、時のナガシ・フルカワSAP長官が打ち出したもの。その後七十一カ所の刑務所が新設されたが、サンパウロ市都市圏はわずか七カ所で、四十一カ所がサンパウロ州西部と北西部に集約された。カランジル刑務所の刑事犯の重罪服役囚のみで八六〇〇人が移送され、それだけで十一刑務所が満員となった。
 これらの囚人はサンパウロ市内の犯罪のため、裁判はサンパウロ市内で行われる。その都度、何百キロも離れた刑務所からSAPと軍警の護衛車でサンパウロ市内の裁判所に出頭させる。これに関わる護衛官の出張費、囚人ともども食費、宿泊費、燃料費は州の負担となる。SAP筋はサンパウロ市近郊だと、莫大な出費の節約が可能だと言い切る。
 フルカワ前SAP長官は移転決定に際し、新刑務所は各市の土地無償提供でコスト安となること、地方だと警備が強化できること、たとえ逃亡があっても再拘束が容易であること、犯罪増発につながらない点を強調した。しかし関係者によると、実態は違うと指摘する。
 サンパウロ州保安局の統計によると、サンパウロ市内の殺人は一〇万人あたり、一九九九年の五十二・五八人から二〇〇五年の二十三・九七人に減少したものの、刑務所所在地では逆の流れとなっている。重罪人が集約されているプレジデンテ・プルデンテ市では六・九八人から十三・八八人、アラサトゥーバ市では十四・二〇人から二十七・六人へと増加している。
 この二市に加えてバウルー市では服役囚の家族らが住みついてファベーラを形成し、暗黒街の様相を呈している。これらの市に面会に行くには最低二五〇レアルは必要で、家族らは移転を決め込んだ。サンパウロ市からは毎週金曜日に面会バスが出るが、登録制の有料で「空き」があれば乗車できる。反面、PCCでは無料で貸切バスを仕立てるため、囚人および家族から感謝の念で迎えられている。これがPCC勢力増加の一因となっている。