2006年12月5日付け
防衛庁を「省」にする法案が衆院を通過し、今国会で成立が確実となったのは喜ばしい。それにしても―長い長い道程であった。防衛庁の創設は昭和29年(1954年)であり、それから50数年も格落ちの「庁」だったのは、旧社会党が反対の立場をとったからだが、来る一月には「防衛省」になりやっと一人前の国になれる▼朝鮮戦争勃発が、戦後日本における軍備の始まりであった。マッカーサ―指令によって警察予備隊が生まれ旧陸士・旧海兵を卒業した陸海軍の将校が大挙して入隊し兵の訓練を行い、日本を守る大切さを植えた功績は今に語り継がれる。故・源田実空将は海兵出身の名パイロットであり、空自の曲技飛行を育て後年は参議院議員になり活躍する。陸士卒の幹部は陸将となって隊員を率い陣頭指揮にあたった▼65年に戦後初めて来伯した練習艦隊の伍賀司令官も海兵卒だし、防衛大学卒が実権を握るのは80年代に入ってからであろう。それでも、国民の自衛隊蔑視は強く、取り分け制服組は嫌われた。自衛隊違憲論も根強く、国民の安全を守る必要性が説かれることが少なくなった社会背景も見逃せない。しかし、こんな風潮は見直されつつあり、近ごろは災害救済などで自衛隊を評価する向きが多い▼陸・空イラク派遣とインド洋で奮闘の海自を支持する声も高い。今回の「省」昇格で自衛隊の海外派遣が本来任務となったのも大きい。北朝鮮の核実験や中国軍原潜による領海侵犯など日本を取り巻く安全保障は難しくなっている。それだけに―新しい防衛省と自衛隊の任務は重いことも肝に銘じてほしい。 (遯)