2006年12月6日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一月二十二日】アジア型新資本主義というのが、ブラジルで話題になっている。資本主義社会は今、アジア発ドミノ現象の勃発前夜だというのだ。アジア共産主義が四十年前にもたらしたドミノ現象を想起させる。それが、どんな形でブラジルへ及ぶのか。当時ソ連崩壊という大型ドミノが、中国共産主義をも倒壊に導くという見方があった。続いて中国ドミノが、北ベトナムを倒壊させるはずであった。ところが予想に反し、インドシナ全土は北ベトナム共産主義の軍門に下った。
米軍は屈辱の敗北を喫し、北ベトナムから撤退。ドミノがどっちへ倒壊しようと、米国は構っていられなかった。ここで妙なことが起きた。ソ連の共産主義は終焉したのに、中国共産主義は不死鳥のように世界でも稀に見る資本主義国家へ変身した。
ベトナムは今、東南アジアで最も有望な市場へ生まれ変わろうとしている。予想した共産主義のドミノ現象は起きなかったが、資本主義のドミノ現象がいま起きようとしている。四十年前の共産主義ドミノ現象は、資本主義へ姿を変えてブラジルや米国を襲おうとしている。
米議会でベトナムの敵国条項を廃し、通商条約を結ぶ案が上程された。ベトナムはWTO(世界貿易機関)へも加盟手続きを始めた。国際金融の外資を呼び込むために、思い切った市場開放に踏み切る考えだ。ベトナムの積極的姿勢に米側が狼狽した。
米国にとってベトナムは、第二の中国だという見方が多い。ベトナムは、中国に優るとも劣らぬ強敵である。ブラジルも中国製品に煮え湯を呑まされた。ベトナム攻勢の第二波が、ブラジルに押し寄せるのも時間の問題だ。
中国の労働事情は分かったが、ベトナムの労働事情は少し違う。ヴェトコン精神で鍛えられた筋金入りで、組織化され、高等教育を受けた人材で溢れている。中国資本主義は、ベトナム資本主義に改造された。さらに低開発国が参考にして、新資本主義が次々誕生するものと思われる。
構造改革も労働法改正もままならないブラジルは、アジア型資本主義の前にいかに太刀打ちするのか。世界の動きをいつまで無視して、独自の道を歩むのか。国際共産主義ならぬアジア資本主義の前に、ブラジルも米国もみの虫のように殻に閉じこもり、自己防衛にタジタジしている。